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はじめに
わが国のギャンブル産業の市場規模は,パチンコ・パチスロが30兆円前後で推移していたが,2010年頃から減少が目立つようになり,その後は年々市場規模が縮小している。しかし,2016年でも20兆円を超える巨大な市場規模であることに変わりはない15)。一方,競馬,競輪,宝くじなどの公営ギャンブルの市場規模は2016年で5兆9000億円と推計されている15)。
いわゆる“ギャンブル依存”は,1980年にDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)-Ⅲで病的賭博という名称で定義されたのが最初で,DSM-Ⅳまでは衝動制御障害に分類されていた。しかし,他の物質依存と共通する点も多いことから,DSM-5ではギャンブル障害に病名が変更になって,嗜癖性障害に含まれることになった1)。アルコールや依存性薬物への依存を物質依存と呼ぶのに対して,ギャンブル,ネットゲーム[ICD(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)-11に含まれることになった]や,まだ正式には診断基準には含まれていないが,買い物,窃盗,セックスなどの行為に対する依存は行動嗜癖と呼ばれる。
ギャンブルは,娯楽の範囲にとどまる社会的ギャンブルから,借金を重ねたり,詐欺や窃盗などの犯罪行為,あるいは自殺と結びついたりして深刻な問題の原因となる病的なギャンブルまで,さまざまなレベルがある。わが国では,特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(通称:IR推進法)が成立したことをきっかけとして,正式には遊技とされているパチンコを含むギャンブル依存への対策が必須となって,マスコミに取り上げられることが多くなった。しかし,医療の現場では,ギャンブル障害の診療を行う医療機関は限られており,必要な人に医療が提供されないのが現状であり,今後の課題となっている。
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