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I 若者のメンタルヘルスを取り巻く現状
近年,思春期・青年期における抑うつや不安,自傷行為,希死念慮,不登校などのメンタルヘルスの悪化が深刻化している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行以降,その傾向は顕著になっている。McGorry(2025)は,精神疾患を発症したことによる早期死亡や生活機能の障害による健康損失がすべての年齢層で増加したと報告している。とりわけ10~34歳の若年層においてその傾向は顕著であり,精神疾患や自傷行為,物質使用が健康全体の損失に占める割合が大きく,若年層ほどこころの健康の問題が生活に及ぼす影響が大きいことが示されている。日本においても,10~20歳代の自殺者数は2020年以降増加し,高止まりの状態が続いている(厚生労働省,2025)。こうした疫学的知見から,若者のメンタルヘルスは優先順位の高い課題として国内外で位置づけられている。
思春期のメンタルヘルスを取り巻く現状の背景には,若者の将来や社会に対する認識も関係している可能性がある。2024年の18歳意識調査「第62回 国や社会に対する意識(6カ国調査)」(日本財団,2024)によると,各国1,000名程度の17~19歳の若者に回答を求めたところ,自分の国の将来に対して「良くなる」と回答した日本の若者の割合は15.3%であり,アメリカ・イギリス・中国・韓国・インド(24.6~85.0%)と比較して最も低かった。さらに「自分の行動で,国や社会を変えられると思う」と回答した割合は45.8%であり,他国(60.8~83.7%)を下回る結果だった。つまり,自国の将来を肯定的に思っていないうえに,自ら社会に働きかけ変えていくことができるという感覚を持つことが難しい状況にあることがうかがえる。そのため,若者が希望を持ちながら将来を展望し,自身の力を活かして成長していけるように,社会や支援体制を整えていくことがこれまで以上に重要になっている。本稿では,近年注目される若者のメンタルヘルス悪化の背景にある心理社会的要因について,特に心理職が臨床実践において遭遇しやすく,また介入可能な要因に焦点を当てて概説し,今後の支援のあり方について考察する。

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