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特集 トラウマインフォームドケアと小児期逆境体験
うつ病に対する小児期逆境体験の影響
Effect of Adverse Childhood Experiences on Depression
平松 洋一
1
,
清水 栄司
1,2,3
Yoichi Hiramatsu
1
,
Eiji Shimizu
1,2,3
1千葉大学大子どもこころの発達教育研究センター
2千葉大学医学部附属病院認知行動療法センター
3千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学
1Research Center for Child Mental Development, Chiba University, Chiba, Japan
2Cognitive Behavioral Therapy Center, Chiba University Hospital
3Department of Cognitive Behavioral Physiology, Graduate of Medicine, Chiba University
キーワード:
Adverse childhood experiences
,
Depression
,
Compassion
,
Mood congruence imagery rescripting
Keyword:
Adverse childhood experiences
,
Depression
,
Compassion
,
Mood congruence imagery rescripting
pp.1159-1165
発行日 2019年10月15日
Published Date 2019/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205915
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抄録 小児期逆境体験(ACEs)とは,小児期に体験した虐待やその他の家庭内の機能不全であり,さまざまな難治性の精神疾患の背景要因として注目されてきた。うつ病とACEsとの関連性は多くの研究で言及されている。たとえば,ACEsを経験していることでうつ病のリスクが増加すること,自殺行動と関連性が強いことなどが示されている。一方で,うつ病の患者にみられる,現在の気分に一致してネガティブな記憶を想起しやすい「気分一致効果」の観点から,うつ病とACEsとの関連性に関する研究に疑問が呈されることもあるが,抑うつ症状の悪化,改善によらずACEsの評価に時間的な一貫性があるという研究もある。治療において,ACEsを背景に持つうつ病の場合は,薬物療法の効果が低下し,難治化する一方で,認知行動療法の有効性が示されている。認知行動療法の進歩の中で,特にコンパッション(compassion:慈悲,思いやり)に焦点を当てた治療技法は,ACEsを持つ難治性うつ病を改善することが期待される。また,ACEsへ直接働きかけ得る認知行動療法の技法として,抑うつ気分に伴うネガティブな視覚イメージや記憶を同定し,その内容を見直す「イメージ書き直し(imagery rescripting)」技法が欧米で実践されており,我々も,うつ病患者を対象にした本邦初のイメージ書き直しの臨床研究において,ACEsの記憶と抑うつ気分の関連性をみている。
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