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I 若者に向けたワンストップ・サービスにおける相談支援と就労支援
2019年より厚生労働科学研究費補助金による東邦大学MEICISプロジェクトの一環として,「SODA(Support with One-stop care on Demand for Adolescents and young adults)」と名付けた若者相談支援窓口の社会実装を進めている(Nemoto et al., 2025)。東京都足立区を皮切りに,現在では埼玉県川口市,北海道札幌市に同様のモデルの窓口を展開し,設置主体や資金,人的資源などは各地域の実情に合わせて実装している。これらの窓口では,精神疾患の好発年齢である若者層に向けたサービスとして,オーストラリアのheadspaceなどの取り組みを参考に,「ワンストップ・ケア」の理念に基づいた実践を行っている(Uchino et al., 2022)。具体的には,メンタルヘルスの不調だけでなく,就学や就労,家庭などの多様な生活場面における心理社会的困難について,内容や対象を制限せずに一括して相談を受け付けている。また,スティグマに配慮し,若者が物理的・心理的に援助希求をしやすい環境設定を行い,精神科医師・心理師・精神保健福祉士などを含む多職種チームによる包括的な支援を実践している。平たく言えば,「地域のよろず相談」として窓口を広く開きながら,若年層に特化した専門の相談支援を提供している。
本プロジェクトにより最初に設置された「あだち若者サポートテラスSODA」は,東京都足立区の北千住にあり,現在は足立区の事業として医療法人財団厚生協会が委託を受けて運営している。北千住には複数の大学や大型商業施設が集まり,商店街には多くの若者が行き交う。窓口は駅前の商店街の小道を入った場所にあり,古民家を改装した作りとなっている(写真)。対象年齢はおおむね15歳から25歳までの若者とし,相談内容は「学校に行くのがつらい」「仕事が続かない」「不安で眠れない」「死にたい」「家族のことで悩んでいる」「生活に困っている」など多岐にわたる。通信制や定時制高校に在籍し,アルバイト先を探したいが一歩を踏み出せないといった相談や,大学を進路未定のまま卒業し,今後の生活や就労について相談をしたいといった内容も多く寄せられる。
本窓口における相談支援の主な技法としては,臨床型ケースマネジメントを採用している。具体的には,多職種チームでのアセスメントの下,ケースマネジャーとなる担当者が定期的な面接などを通して精神・心理療法を行いながら,必要に応じて家庭や学校,地域の各種フォーマル・インフォーマルな機関や団体と連携のネットワークを構築する(Dieterich et al., 2017)。さらに,就労に不安を抱える若者に向けて,伴走型個別就労支援(Individual Placement and Support : IPS)も行っている。これは,個別支援を基本とし,個々の好みやニーズ,長所に合わせて仕事探しを行い(職場開拓・開発),実際の職場で働きながら必要なスキルを身につけることを支援するといった特徴を持つ就労支援の技法である(Bond et al., 2026)。ただし,これらの技法自体もさることながら,支援の核となるのは,若年層に特有の揺らぎやすいアイデンティティに配慮のうえ,安心を感じられる心理的な土台を築きながら,自己肯定感を育むことができるよう伴走することである。悩みに伴走しているうちに,若者たちが自ら問題解決や社会参加へと動き出す場面は少なくなく,若者が本来持つ健康的な行動力や回復力にこちらが驚かされることも多い。
窓口に来所する若者からは,「これまで,この悩みをどこに相談したらよいかわからなかった」といった意見が非常に多く寄せられている。また,過去に実施した調査でも,わが国におけるメンタルヘルスに関する援助希求先の不明瞭さが際立つ結果が示されている(Uchino et al., 2023)。一方,日本には,都市部と地方部により差はあるものの,若者のメンタルヘルスを支える社会インフラが整備されていないわけではない。さまざまな課題はありつつも,全国各地の保健所・保健センターや市町村窓口では精神保健に関する対応を行っており,また学校内にはスクールカウンセラーに加えてスクールソーシャルワーカーが配置されている場合もある。現状でも窓口には,教員やスクールカウンセラーなどから,学外での支援や卒後の相談先として紹介を受けて来所する若者は多い。また,学校や家庭では相談がしづらく,利害関係のない地域の第三者だからこそ話しやすいということもある。しかし,よくよく話を聞くと,学校での悩みや困りごとが中心となる場合は,スクールカウンセラーなどへの相談の仕方を一緒に考えることで,本人が学内での援助希求を前向きに捉えなおすことも多い。このように,「地域のよろず相談」である窓口が相談の入口かつハブとなり,すでにある社会インフラが有効に機能するために地域のネットワークを構築していくことを重視して実践を行っている。

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