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FORUM 分子生物学の臨床応用 “分子”から“疾患・患者”へ・Vol.3
心筋特異的ミオシン軽鎖キナーゼを標的としたmyotropeの開発
塚本 蔵
1
Osamu TSUKAMOTO
1
1兵庫医科大学医学部生化学講座
pp.1068-1072
発行日 2026年6月13日
Published Date 2026/6/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu297111068
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はじめに
左室駆出率が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF)は,人口の高齢化に伴いその重要性が増している.慢性期治療は標準治療の進歩により改善しつつある一方,進行期・重症HFrEFでは低心拍出や血行動態破綻(強心薬投与や補助循環を要する病態)に直面し,収縮力を安全に立て直す治療が依然として不足している.この局面で用いられるカテコールアミンやPDE3阻害薬は,細胞内Ca2+濃度を上昇させて収縮力を増強する(calcitrope)が,不整脈や心筋酸素消費の増大などの代償を伴うことが長年の課題であった.すなわち,「Ca2+動態を介して間接的にサルコメアを駆動する」戦略は,Ca2+負荷の増大を不可避的に内包する.これに対し,直接的サルコメア制御薬はサルコメア構成タンパク質そのものに作用し,Ca2+動態への影響を最小限に抑えつつ心筋収縮性を調節しうる点に特徴がある.重症心不全では,高度に低下した心筋収縮力をいかに安全に改善するかが治療戦略の核心であり,サルコメアタンパクを標的として収縮性を増強するmyotropeという治療概念が注目されている1-3)(図1).

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