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はじめに―最初の一言
筆者の勤める病院は,街の中心から少し離れたところにあり,自家用車やバスでやってくると,道がわかりにくい。そのため,初診の患者さんには,「今日は,どうやって来られましたか? 大変じゃなかったですか?」という言葉で始めることが多い。「そうです。国道から降りてからの道がわからなくて……」「病院の入り口がわかりにくくて……」などと返事が返ってくる人は,その後の主訴を尋ねたりするのもスムーズにいくことが多い。だが,そこで不意を突かれたように絶句したり,「もっと,表示をきちんとしなければ……」などと返事が返ってくることもある。
「電車やバスで来た」と聞くと,「混んでなかったか」「どこで乗り換えたか」などと尋ねる。ルートを聞いていると,その人の説明力がわかるし,人のいる電車やバスの中でどのくらい緊張するかなどもわかる。同年代への緊張が強いと電車やバスはとても苦しいものとなりやすく,もし続けて来るようなら「人の少ない時間帯に変えてみようか」などと提案する。「嫌なものを避けながら目的を達する」というやり方にも通じるものである。「久しぶりに街に出ました」などと聞くと,「駅が新しくなったようだから,帰りに面白そうなお店に寄ってみたら」などと話してみて,興味の持ち方や興味に沿ってどの程度動けるかなどを知ることもある。かつて勤務していた大学病院は,病院が駅から徒歩10分余りのところにあり,「駅から来るのが大変だったでしょう」と,最初に話すことが多かった。
最初の一言は,その時々で,天候になったり季節になったりと変わるのだが,患者さんの緊張を和らげるだけでなく,患者さんを理解するためにも有用な言葉を選びたいと思う。

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