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はじめに
本誌では,これまで発達障害(神経発達症)について幅広く何度か特集が組まれてきた。最近でも,本誌の編集委員である齊藤万比古による優れた特集が編まれている。「発達障害の精神療法と心の発達」(第44巻第2号),「発達障害(神経発達症)臨床の現在」(第50巻第4号)である。
これらの特集を見ても,経験豊かな児童精神科医たちが主となり,その病理理解とさまざまな介入(精神療法,家族介入,家族への心理教育)など,多様な関わり方が示されている。
一方,以前から,児童精神科医あるいは発達障害(神経発達症)の専門家たちは警鐘を鳴らしていた。発達障害(神経発達症)は決して特異な疾患ではなく,児童・思春期の特別外来のみに受診するわけではないだろうという指摘である。通常の精神科臨床,あるいは精神療法(心理療法)の現場にも,少なからず大人の発達障害(神経発達症)の人たちが紛れ込み,それと自覚しないまま受診している。日々の臨床でも,発達障害(神経発達症)という枠組みから理解と介入を念頭に置くことが要請される,という指摘でもある。
筆者は,外来森田療法の専門外来(自費診療)を1980年代後半に立ち上げ,不安,抑うつ状態(多くは慢性的で,さまざまな治療歴を持つ)の精神療法に携わってきた。当初から強迫性恐怖を主とする自己抑制的な神経質(神経症性障害)は少なく,傷つきやすい自己愛の病理から理解できる事例が多かった。社会的引きこもりの児童・思春期例(家族介入が必須である)であったり,成人期,中年期,さらには老年期の事例で,それなりに社会的適応はしていたが,行き詰まり,精神療法を求めて来た人たちである(北西,2001)。
2010年代頃から,慢性的な抑うつや不安状態を呈するが,それまでとはやや異なるパーソナリティ特性を持つ一群が,筆者の臨床に現れてきた。その頃から発達障害(特にASD)について,多くの図書が流布し,それに刺激され,そのような枠組みで理解しようと試みるようになった。最近では,ASDあるいはADHDという枠組みでの理解と介入が有効であると思われる事例の占める割合が大半となった。筆者も注意深く,さまざまな不安症,抑うつ症,強迫症,ストレス因関連症群,身体症状症などの多彩な訴えと,そこでの問題点をそのような視点から理解しようと心がけてきた。また,スーパービジョンを行う事例の大半もASDあるいはADHDの事例であり,精神療法(あるいは心理療法,カウンセリング)の臨床の現場ではこのような病態をどのように理解し,介入していったらよいのか,苦慮しているのが現状であろう。
ここではASDの精神療法で学んだことについて,簡単に述べ,特集の導入としたい。

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