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はじめに
がん等の身体疾患により重要他者を喪失した遺族は,多様な悲嘆反応を経験する。その多くは時間経過とともに軽減する一方,一定割合の遺族では抑うつ,不安,強い悲嘆反応の遷延,生活機能の低下などの精神心理的苦痛が顕在化し得る。臨床においては,こうした「自然経過としての悲嘆」と「臨床的介入を要する高リスク状態」を識別し,苦痛の程度と経過に応じて支援の内容や強度を調整することが求められる。近年では,ICD-11(WHO Family of International Classifications, n.d.)およびDSM-5- TR(American Psychiatric Association, 2022) において遷延性悲嘆症が精神障害として正式に位置づけられた。このことは,支援ニーズの高い遺族を適切に同定し,必要な医療やケアを届けるうえで臨床的意義が大きい。
遺族ケアの対象は死別後に限定されず,闘病中に生じる予期悲嘆への配慮を含む「生前から死別後までの連続体」として理解されるべきである。一方で,遺族が経験する心理状態や精神症状の概念化には国際的にも幅があり,用語の揺れや近接概念の混在が,研究知見の統合と臨床への適用を難しくしてきた。こうした背景のもと,日本サイコオンコロジー学会および日本がんサポーティブケア学会(2022)により,『遺族ケアガイドライン―がん等の身体疾患によって重要他者を失った遺族が経験する精神心理的苦痛の診療とケアに関するガイドライン 2022年版』(以下,ガイドライン)が作成された。本ガイドラインは,身体疾患で重要他者を失った遺族を支える医療者を広く対象とし,がん領域を主要な臨床的文脈としつつ,標準的対応を提示することを目的としている。本稿では,同ガイドラインの基本理念,特徴,臨床疑問(Clinical Question : CQ)と推奨の要点を概説し,臨床実装のポイントと今後の課題について整理する。

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