特集 別居・離婚・再婚家族と子どもへの支援
高葛藤カップルへの心理臨床
青木 聡
1
1大正大学
pp.722-727
発行日 2025年12月5日
Published Date 2025/12/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51060722
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はじめに
カップルとは,一般に,互いの合意に基づいて親密な関係を継続する二人組を意味している。それは単なる友人や知人とは異なり,排他的かつ独占的な強い結びつきによって成立する「情緒的ユニット」(Bowen, 1978)であり,性的および/あるいは精神的な親密性が関係の重要な要素といえる。Bowenは,家族が「情緒的ユニット」であることを強調したが,カップルについても同様に,その関係性を一つのシステムとして捉える視点が求められる。二人の感情や行動は不可分に絡み合い,互いに影響を及ぼし合う。この関係性は,あたかも独自の人格を持つ一体の生き物のように理解することも可能である。心理臨床においては,カップルの関係を動かす力学,すなわち当該の二人に特有の相互作用に焦点を当てる見方が欠かせない。
一方,高葛藤の定義は意外に困難であり,筆者の知る限り,学術的あるいは臨床的に広く合意された定義は存在しない。単純に言えば,高葛藤カップルとは,日常的に激しい争いを繰り返すカップルのことを指す。外形的には,調停や裁判で争うカップルに限定することができるかもしれない。しかし,「普通」のカップルの争いと,「高葛藤」カップルの争いは,どのように異なるのだろうか。高葛藤と判断する基準は存在するのだろうか。本号の特集では,子どものいるカップル(父母)が高葛藤状態に陥った場合の支援が想定されている。子どものいるカップルの高葛藤状態には,どのような特徴が見られるのだろうか。これらの点について検討した上で,高葛藤カップルへの心理臨床について述べていく。

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