特集 自殺をめぐる諸問題
自殺ハイリスクの人の精神療法
林 直樹
1
1西ヶ原病院
pp.150-157
発行日 2025年4月5日
Published Date 2025/4/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51020150
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はじめに
自殺ハイリスクの人(自殺未遂や自傷行為をした人,自殺念慮を訴える人)の精神療法は,われわれの最重要のテーマの一つである。そして精神療法はその人々の自殺予防に大きく貢献できると考えられている(American Psychiatric Association, 2003 ; Wasserman et al, 2012)。現在ではすでに,対照比較試験(Randomized Control Trial(RCT))の系統的レビューやそのメタ分析による臨床的研究が重ねられて,いくつかの精神療法的アプローチに自殺行動再発予防に効果があることが確認されている。しかし,この問題には,どこまでで満足できるかというレベルを設定することができない性質がある。自殺予防に完璧を期することはそもそも不可能であるし,それが奏功しなかった場合の結末は特別に深刻なものだからである。われわれはまだ,目の前の患者に対して何ができるか,何をすべきかという基本的な議論を続けなくてはならない。
本稿では,自殺未遂者を中心とする自殺ハイリスク者の精神療法におけるいくつかの重要なポイントや,そこで注意するべき点や考え方についての議論が行われる。ここではまず,自殺ハイリスクの人々の精神療法において集積されたエビデンスを示し,その代表的な精神療法を紹介する。次いで実際的な自殺ハイリスクの精神療法について議論し,さらに治療者のあり方について検討を加えるという順序で論を進めることにしたい。

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