Japanese
English
特集 現代の自殺をめぐる話題
自殺と精神障害
Suicide and Mental Disorders
玄 東和
1
,
張 賢徳
1
Touwa GEN
1
,
Yoshinori CHO
1
1帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科
1Department of Psychiatry, Teikyo University Mizonokuchi Hospital, Kawasaki, Japan
キーワード:
Suicide
,
Suicidality
,
Suicide-related events
,
Mental disorders
Keyword:
Suicide
,
Suicidality
,
Suicide-related events
,
Mental disorders
pp.1043-1052
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101517
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
1998年以降,本邦における年間自殺者数が30,000人を超えた状態が続いている。2006年には自殺対策基本法が制定されるなど国家的な取り組みが始まっている。しかし,自殺者数は減少するどころかむしろ微増の傾向にある。
そもそも,なぜ人間は自殺するのだろうか。人間も生き物である以上,生存本能が機能している。そして,それに反する自殺に至るプロセスには,「生」へ戻れる可能性のある段階がいくつかあるように思える。自殺既遂した人たちは,その各段階を乗り越えて自殺プロセスを進んでいくのである。どのような力が働いて各段階を乗り越えていくのだろうか。
その主要な推進力として,本稿のテーマである精神障害を挙げることができる。1950年代以降,自殺既遂者に対する心理学的剖検調査(psychological autopsy)が世界各国で行われており,その結果,自殺既遂者の90%以上がなんらかの精神障害を抱えていたことが判明した27)。つまり,いわゆる「理性的な自死」というものが10%にも満たないのである。このため,自殺予防という観点からみると,精神科医療の果たす役割は大きいことになる。その範囲は直接的な精神障害に対する治療にとどまらず,そのサポートや環境調整など広範囲に及ぶ。
本稿では,精神障害と自殺の関係を調べる手段としての心理学的剖検調査の結果に触れたのち,精神科臨床における自殺対策に有益と思われるリスク要因について述べて,具体的な対策について考察していきたい。
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.