特集 精神分析はたのしい――人文知との邂逅・民主化の未来
失われた主体化を求めて――ケアの時代の精神分析
山崎 孝明
1
1こども・思春期メンタルクリニック
pp.2-17
発行日 2026年8月20日
Published Date 2026/8/20
DOI https://doi.org/10.69291/cp26070002
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1 はじめに
2021年,私は『精神分析の歩き方』(山崎,2021)を出版した。それは,日本において,精神分析が絶滅危惧種であるとの危機感に端を発したものであった。ゆえにそこでは「精神分析村」への「観光客」の招致を狙い,間口を広げることを意図した。
本特集号のターゲットも「観光客」である。臨床心理学村,人文村から読者を招き入れたいという『精神分析の歩き方』のコンセプトを引き継いでいる。「観光客」の内実をより詳細に述べるとすれば,①実践としての精神分析に関心のある心理臨床家,②実践に関心のある知識人,人文系読者,③思想としての精神分析に興味のある知識人,人文系読者,である。
『精神分析の歩き方』では,精神分析業界「外」への観光案内と「内」への根源的批判を一冊とすることで誤配を起こすことをもくろんだ。前半と後半で別の本にした方がよかった,という声をいただいたこともある。しかし,私はそれをあえて一冊の本とすることにこだわった。
本特集号も同じたてつけになっている。精神分析業界,そして人文界の第一線で活躍する執筆陣に集まっていただいた結果,前半と後半ではかなり毛色の異なる内容となった。しかし,それらをあえて一冊に収めていることにこそ狙いがある。この構成により臨床家への人文知の,そして人文読者への臨床実践の誤配をもくろんでいる。雑誌という多様な著者が執筆する形式を取ることで,『精神分析の歩き方』という単著において私一人の力ではなしえなかった規模の誤配が期待できる。

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