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I 認知行動療法の学習モデル
認知行動療法の学習法といえば,マニュアル,動画視聴,ロールプレイ,スーパービジョンなどが思い浮かぶだろう。いずれにしてもその背景には,自分を振り返りより良くしようとする過程が不可欠である。認知行動療法の学習モデルであるDeclarative-Procedural-Reflectionモデル(Benett-Levy et al., 2009)では,本や講義などで得られる技法の知識(宣言的知識),それをどのようにどのようなタイミングで行うのかについてのスキル(手続き的スキル)の習得だけでなく,技法をどのように使っていたのかを振り返る(内省),という3つのシステムの相互作用から認知行動療法の技法の習得と洗練がなされる(図)。
この学習モデルのもうひとつの重要な点は,セラピストとしての自己(therapist self)のみならず,個人としての自己(personal self)の領域を想定していることである。心理職であれば大学院から本格的にさまざまなスキルを身につけていくが,それまでの人生で身につけてきた独自の対人関係上の態度や信念,コミュニケーションのあり方も同時に存在することは否定できない。Beck et al.(1990[井上監訳,1997,p.180])は「治療関係という枠を効果的に取り扱い,自分の個人的反応を治療過程で使うためには,認知療法家はまずはじめに自分自身の思考,感情,信念を敏感に観察しなければならない」と述べており,これはまさに自己の領域に着目する必要性についての指摘である。対人関係スキルは心理療法の結果に大きく影響を及ぼすため,自分自身に目を向けて「自分を磨く」という色彩のトレーニングも大切である。

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