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I はじめに
認知療法・認知行動療法(CBT)が保険適用になってから15年が経過した。現状でも届出医療機関が爆発的に増えているわけではないが,心理臨床家だけでなく一般市民や精神科以外の医療者にCBTの周知が進んでいることは間違いない。また,CBTに関連する基礎・臨床研究は,この15年間継続して盛んに行われ,興味深い知見がさらに増えている。
個人的なことで恐縮だが,筆者も還暦を過ぎ,病も得て,残り少ない時間でこれから何をなすべきか具体的に考えざるをえなくなった。そこで今回は,2050年の認知行動療法(CBT)を想像して今を豊かにしたいという個人的動機から特集を組んでみることにした。50年先,100年先では想像が追い付かず呆然とするだけだが,25年先なら,自分の余命にかかわらず,想像が許されるかもしれないと考えた。加えて筆者は,自分の所属集団や利害関係者だけを優遇するような,昨今の狭量な「××ファースト」に辟易しているので,ささやかな抵抗の意味も込めて,本特集では2050年の「みんな」のCBTについて考えることにした。本特集における「みんな」は,国籍や障害の有無にかかわらず,日本に住むすべての人たちを等しく指している。すべての人のメンタルヘルスや福祉の維持・向上を図るためにCBTが貢献できることについて,現在から未来に向けて光を当てたい。したがって当然ながら,「みんなのCBT」というタイトルに,他の思想を排除してCBTが社会や業界のヘゲモニーを握る,などという狭量な意図はまったく含まれない。
本特集の構造上の柱として,社会実装への方略,萌芽的な臨床技法の紹介,未来を担う人材育成の3つを設定した。これらのなかで社会へのインパクトが最も強いのは社会実装への方略であろうが,三者は互いに深くかかわっており本質的には不可分である。見出しとしての読者の便を考えたこれら三本柱について,また特集の目的や目標について以下に記す。

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