オピニオン
県立病院の独立法人化に向けた取り組み―「制度設計」は患者のために,そして私たちの未来につなぐ道標
宮島 喜文
1,2
1長野県立木曽病院
2社団法人長野県臨床衛生検査技師会
pp.22
発行日 2010年1月1日
Published Date 2010/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102715
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検査技師学校を卒業し,臨床検査技師として郷里の長野県に奉職して30数年,就職時には今日のような自治体病院の存続危機や,公務員の職を離れることになるとは予想もつかなかった.本稿では,筆者の立場で病院の経営形態の見直しによる地方独立行政法人化(以下,独法化)への背景と経緯を振り返り,私見を述べる.
戦後の医療供給体制は日本経済の高度成長のなかで,科学が進歩し,さまざまな医療技術が革新的に高度・専門化した.また,同時に国民にとっては皆保険制度のなかで手厚く医療を享受できる社会が実現したものと言える.しかし,経済は低成長期に入り,かつ急速に進む少子・高齢化時代を迎え,あらゆる社会システムにおいて需要と供給の均衡のとれた“最適化”を目指す見直しが進んでいる.民主党へ政権が移り,小泉内閣の構造改革路線の行き過ぎた面の修正が図られたとしても,“最適化”を求める大きな潮流が変わることはないであろう.ただ,その手法はどこに重点を置くのかなどをめぐって,政治・社会・経済により左右される可能性が大である.独法化という経営形態の見直しの根拠となっている「公立病院改革プラン:平成19年12月」は,厳しい財政下で持続可能な病院経営を目指したもので,経営の効率化,統合・再編,経営形態の見直しなどにより“最適化”を進めているものと解することができる.
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