Crosstalk 地域医療×臨床検査・4
迅速検査が示す道標
寺裏 寛之
1
1岩手県立千厩病院総合診療内科
pp.340
発行日 2018年3月15日
Published Date 2018/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201541
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へき地での診療では,高度な対応が必要な場合には後方病院に診療を依頼することがある.われわれの勤務する病院では約20km離れた地域医療支援病院に診療をしばしば依頼している.少しでも早く高度な治療を受けるためには迅速かつ的確な診断が必要となる.1分1秒も無駄にできない.このようなときに有用な手段としてPOCT(point of care testing)がある1).POCTとは,医療現場でリアルタイムにデータが得られる臨床検査のことである.今回は,POCTが有用であった経験を紹介する.
40歳代の男性が,夜間の前胸部不快感を主訴に当院に初診した.来院時の意識は清明であり,呼吸苦はなく,血圧は143/90mmHgで不整脈もなかった.疼痛は最大時と比較して1/10となっていたこともあり,笑顔もみられ,一見,問題ないようにもみえた.訴えをさらに詳しく聞くと,胸部不快を感じるようになったのは3〜数日前からで,冷汗を伴うことがあり,いずれも15分程度で自然に軽快していた.既往歴には高血圧症があった.糖尿病はなく,喫煙者であった.以上から不安定狭心症あるいは心筋梗塞の可能性があると考えた.心筋梗塞は致死的な疾病であり,経皮的冠動脈形成術までの時間が15分遅れるごとに死亡率が上昇する2).
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