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学派統合,すなわち心理療法の統合とは何か。杉原(2021)は,「心理療法の統合は(中略)目の前のクライエントに対して効果的に心理療法を行うために,幅広く多様な学派のリソースに依拠するアプローチである」と述べている。つまり,クライエントにとってより効果的な心理療法を行う目的で,学派を問わずさまざまな方法を取り入れるアプローチであると言える。初めに方法(理論・学派)ありき,ではなく,中心に据えるのはあくまでクライエントであって,クライエントに役立つ方法であれば学派を超えて取り入れるのが心理療法統合のあり方である。
また,心理療法統合と統合的心理療法の異同について,福島(2024)は「『心理療法統合』とはその取り組み姿勢やチャレンジとそのプロセスを指し,『統合的心理療法』はその結果として成立した心理療法を指す」と述べている。つまり,心理療法統合の取り組みの後に作られた特定の心理療法が「統合的心理療法」であり,日本でも知名度のある統合的心理療法として,例えば弁証法的行動療法,アクセプタンス&コミットメント・セラピー(Acceptance and Commitment Therapy : ACT),エモーション・フォーカスト・セラピーなどがある。
そのように考えると,統合的心理療法を忠実に実践する臨床家は果たして統合的なのだろうか,ある体系立った心理療法に忠実という意味でむしろ学派的と言えるのではないか,という疑問も生じる。初めの定義に立ち戻って考えるならば,クライエントを中心に据え,学派の教えではなくクライエントに合ったものを柔軟に取り入れる姿勢を持つのならば統合的と言えるのだろう。しかし,統合的あるいは学派的といった分別以上に重要なものがある。

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