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I はじめに
発達障害のある子どもに対する早期支援の必要性は,国内外で急速に認識が高まってきた。近年では,保育や教育,福祉,医療といった分野を越えて,発達の気になる子どもたちへの支援体制の整備が進められている。しかしながら,その質と実効性には依然として課題が存在し,科学的根拠に基づいた支援(Evidence-Based Practice : EBP)が,どの地域においても当たり前に提供される社会的インフラには至っていない。
発達支援の出発点として重要なのは,単なる「療育の提供」にとどまらず,子どもたちが生活の場である家庭・保育園・地域で一貫した支援を受けられるような仕組みの構築である。特に,早期に介入することは,子どもの発達を促進するだけでなく,保護者の心理的負担を軽減し,家庭内の養育環境や,さらには保育・教育機関等における地域生活にも影響をあたえる重要な支援となる。
発達障害のある子どもは,定型発達の子どもとは異なる特性を持つことが多く,個別に応じた支援を必要とする。とりわけ,社会的コミュニケーションの困難さ,感覚の過敏さ,注意の逸れやすさといった特性は,日常生活や集団活動といった環境に応じさまざまな困難を引き起こす。そのため,早期の段階から子どもを理解し,適切な支援環境を整えることは,子ども自身の幸福だけでなく,家族全体の福祉に深く関わる課題である。筆者が共同代表を務めるNPO法人は,2006年に学生団体として活動を開始し,応用行動分析学(Applied Behavior Analysis : ABA)に基づく早期療育支援モデルを構築してきた。2020年からは,東京都江戸川区において児童発達支援センターの指定管理を受託し,公的制度に則った療育モデルの実装に取り組んでいる。本稿では,その立ち上げから現在に至る取り組みについて,エビデンス,行政連携,支援者育成,ICTの導入など多角的な視点から概説する。

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