特集 教科書には書いておらず,大学院でも教えてもらえない,現場で学ぶしかないありふれた臨床テクニック集
精神分析(ふだんづかい編)―松木邦裕が精神分析家じゃないとき
松木 邦裕
1
1日本精神分析協会
pp.8-13
発行日 2025年1月10日
Published Date 2025/1/10
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Ⅰ はじめに
ある晩のこと,悪夢のような依頼が来た。
「教科書には書いておらず,大学院でも教えてもらえない,現場で学ぶしかないありふれた臨床テクニック集」に寄稿しなさいというのである。けれども,これはけっして脅迫ではない。あくまで書き手の主体性にまかされた依頼である。
しかし,ここが難しいところである。なぜなら,編集担当の東畑開人氏と山崎孝明氏は10年以上に及んで知っている人たちであり,彼らとの間にはすでに,それぞれに特異な質の関係が現在完了進行形で私にとっては存在しているからである。
そこでそれらの質を考慮に入れながら私は考え,しばらくして床に就いた。意外や,いつものようにすぐに寝ついていた。しかしながら,目覚めたとほとんどに同時に,何が書けるか浮かばないが,引き受けることにしようと思った。眠っていて意識は閉じていたが,無意識ではα機能が作動していたのであろう。そしてこの文章に手を付け始めた。
しばらく思い出したことがあった。
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