医療AI ─患者も使い始めた今，医師こそ使いこなす時代へ─

患者がAIを使い始めた時代

　「先生，ChatGPTで調べてきたんですが…」

　このような言葉を患者から耳にした医師も多いと考えられる．いまやAIは一部の専門家や大病院だけのものではなく，一般の患者の手元にまで広がり始めている．しかもそのAIは，医療用に開発されたものではなく，誰でも使える無料ツールである．医療の専門家ではない患者がAIに相談し，まるで「セカンドオピニオン」のように使う時代が，既に現実となっている．こうした変化を目の当たりにし，自らもAIの活用を検討し始めた医師も多いと考えられる．実際，最近の生成AI，特にChatGPTの進化は目を見張るものがある．たとえば，「2025年の心不全ガイドラインを要約してください」「高齢者に心房細動を説明する文章を作成してください」と尋ねれば，数秒でそれらしい答えが返ってくる．さらに，米国ではGoogleが開発した医療特化AIが，専門医を超える診断性能を示したと報告され，世界的に注目を集めている^1）．