特集 虚血性心疾患
セミナー 臨床医が知るべき虚血性心疾患の病態と診断
心エコー図で虚血性心疾患を診断する
大門 雅夫
1
1東京女子医科大学循環器内科
キーワード:
▶心筋虚血によって生じる心筋の異常は,時間経過とともに段階的な異常を引き起こす「虚血カスケード」として知られている.
,
▶心筋コントラストエコー図は超音波用コントラスト剤を使用して心筋灌流を可視化する方法であり,心筋虚血の診断に有用である.
,
▶冠動脈エコー図によるCFRは心筋虚血評価に有用であり,冠動脈に器質的病変がなければ心筋微小循環指標として用いることが可能である.
,
▶負荷心エコー図は,負荷中に生じる機能性僧帽弁逆流の増加や肺高血圧,左室充満圧の上昇も同時に評価することが可能である.
,
▶虚血領域の心筋収縮が非虚血領域に比べて遅延して,収縮のピークが拡張期に生じる現象をPSSと呼び,急性虚血の鋭敏な指標である.
,
▶負荷心エコーでCMDを診断するためには,あらかじめ冠動脈CTなどで器質的冠動脈狭窄の有無を明らかにしておく必要がある.
,
▶心エコー図による心筋虚血診断には,診断能が検査者の熟練度に依存するという問題を内包する.
Keyword:
▶心筋虚血によって生じる心筋の異常は,時間経過とともに段階的な異常を引き起こす「虚血カスケード」として知られている.
,
▶心筋コントラストエコー図は超音波用コントラスト剤を使用して心筋灌流を可視化する方法であり,心筋虚血の診断に有用である.
,
▶冠動脈エコー図によるCFRは心筋虚血評価に有用であり,冠動脈に器質的病変がなければ心筋微小循環指標として用いることが可能である.
,
▶負荷心エコー図は,負荷中に生じる機能性僧帽弁逆流の増加や肺高血圧,左室充満圧の上昇も同時に評価することが可能である.
,
▶虚血領域の心筋収縮が非虚血領域に比べて遅延して,収縮のピークが拡張期に生じる現象をPSSと呼び,急性虚血の鋭敏な指標である.
,
▶負荷心エコーでCMDを診断するためには,あらかじめ冠動脈CTなどで器質的冠動脈狭窄の有無を明らかにしておく必要がある.
,
▶心エコー図による心筋虚血診断には,診断能が検査者の熟練度に依存するという問題を内包する.
pp.1524-1528
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.10_012
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
虚血性心疾患は,心筋への酸素供給と需要の不均衡によって心筋虚血が生じる疾患群であり,その病態は多岐にわたる.かつては,冠動脈の器質的狭窄の診断と治療が主な焦点であったが,近年では冠攣縮性狭心症vasospastic angina(VSA)や冠微小循環障害coronary microvascular dysfunction(CMD)のように,冠動脈に有意な狭窄を認めないにもかかわらず心筋虚血が生じる非閉塞性冠動脈疾患ischemia with non-obstructive coronary arteries(INOCA)の重要性が認識されている.そのため画像診断においても,器質的冠動脈狭窄の検出だけではなく,冠攣縮や微小循環障害による虚血の評価が期待されている.心エコー図には,腎機能障害や被曝の懸念がない非侵襲的検査で患者への負担が少ないために,必要に応じて繰り返し検査を行えるという利点がある.また,心臓の形態,機能,血流情報を短時間でリアルタイムに得られる画像診断法という特性もある.ここでは,心エコー図による心筋虚血評価の有用性と限界について解説する.

Copyright © 2025 Bunkodo Co.,Ltd. All Rights Reserved.