特集 虚血性心疾患
セミナー 臨床医が知るべき虚血性心疾患の病態と診断
外来検査で虚血性心疾患を診断する ─心電図・ホルター心電図─
廣瀬 和俊
1
1東京大学医学部附属病院循環器内科
キーワード:
▶12誘導心電図は,最も簡便に施行可能な虚血性心疾患の診断モダリティである.
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▶急性冠症候群では,速やかな心電図診断と必要に応じた経時的評価が適切な患者管理のうえで重要である.
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▶慢性冠症候群では,安静時の心電図においては特徴的な心電図変化が認められない場合が多い.
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▶運動負荷心電図は,狭心症症状の出現とそれに一致した心電図変化の有無を確認することができ,運動耐容能の評価にも使用可能である.
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▶近年,ガイドラインにおける運動負荷心電図の位置づけは変わってきている.
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▶ホルター心電図は,外来診察時の短時間の心電図では評価困難な活動時の心電図変化や,特に夜間安静時の心電図変化を評価することが可能であり,冠攣縮性狭心症の診断に有用である.
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▶ホルター心電図における虚血性心疾患の診断能は高くないため,他の検査モダリティと組み合わせることも考慮する.
Keyword:
▶12誘導心電図は,最も簡便に施行可能な虚血性心疾患の診断モダリティである.
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▶急性冠症候群では,速やかな心電図診断と必要に応じた経時的評価が適切な患者管理のうえで重要である.
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▶慢性冠症候群では,安静時の心電図においては特徴的な心電図変化が認められない場合が多い.
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▶運動負荷心電図は,狭心症症状の出現とそれに一致した心電図変化の有無を確認することができ,運動耐容能の評価にも使用可能である.
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▶近年,ガイドラインにおける運動負荷心電図の位置づけは変わってきている.
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▶ホルター心電図は,外来診察時の短時間の心電図では評価困難な活動時の心電図変化や,特に夜間安静時の心電図変化を評価することが可能であり,冠攣縮性狭心症の診断に有用である.
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▶ホルター心電図における虚血性心疾患の診断能は高くないため,他の検査モダリティと組み合わせることも考慮する.
pp.1518-1522
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.10_011
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心筋虚血と心電図変化
心電図検査は心筋(細胞)の電気活動を評価するものであり,虚血性心疾患では,心筋への血流が一時的または持続的に障害されることにより,心電図のST部分やT波,Q波といった成分に特徴的な変化が認められる.冠動脈は心外膜側から心内膜側にかけて分布しており,冠動脈狭窄に伴う心筋虚血は心内膜側から生じ,ST低下として認められる.一方で,冠動脈の閉塞(血栓による閉塞や冠攣縮)が生じると,心内膜側から心外膜側にかけて貫壁性の心筋虚血が生じ,冠動脈支配領域に一致したST上昇が認められる(例:前壁梗塞:Ⅴ1-Ⅴ4誘導,下壁梗塞:Ⅱ,Ⅲ,aⅤF誘導,側壁梗塞:Ⅰ,aⅤL,Ⅴ5-Ⅴ6誘導).また,心筋虚血に伴うST上昇がみられた誘導の対側の誘導では,鏡像変化としてST低下を認めることが多い.超早期の心筋梗塞においては,ST上昇に先行して生じるT波増高(hyper acute T)が診断の手がかりとなる(図1).心内膜下に限局した梗塞ではST上昇を伴わないT波陰転化を認めることもある.また,心筋梗塞後の変化として数時間~数日で心筋壊死を反映する異常Q波(幅0.04秒以上,深さがT波の1/4以上)や,経時的にT波終末部の陰転化が認められる.

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