特集 虚血性心疾患
総説 温故知新 ─古くて新しい虚血性心疾患─
心外膜由来の虚血性心疾患(慢性冠動脈疾患・急性冠症候群)の診断と治療 ─ガイドラインから学ぶ─
三浦 瑞樹
1
,
上妻 謙
1
1帝京大学医学部内科学講座
キーワード:
▶虚血性心疾患は主要な死因である.
,
▶疾患概念はACADへと転換された.
,
▶慢性冠動脈疾患は労作時胸痛が特徴的である.
,
▶慢性冠動脈疾患は内科的治療と生活指導が基本となる.
,
▶LDL-Cは70mg/dL未満を目指す.
,
▶高リスク例にはPCSK9阻害薬の併用を考慮しLDL-C 55mg/dL未満を目指す.
,
▶慢性冠動脈疾患の症状残存時はPCIやCABGを検討する.
,
▶ISCHEMIA試験で血行再建の限界が示された.
,
▶急性冠症候群では前駆症状の把握が重要である.
,
▶STEMIでは迅速な再灌流が求められる.
,
▶急性冠症候群ではリスクに応じ侵襲戦略を選択する.
,
▶IVUSやOCTなど血管内イメージングが手技の最適化に有用である.
,
▶二次予防では包括的管理が必要である.
,
▶無症候段階からの介入が今後の課題である.
,
▶ACS発症時最大耐用量のスタチン療法を受けてもLDL-C≧55mg/dLの場合,エゼチミブ,PCSK9阻害薬を追加し,LDL-C<55mg/dLを目指す.
,
▶ACADという新しい概念のもと,無症状段階の粥状硬化病変の段階から疾患をとらえ,生活指導や薬物療法を行う.
,
▶動脈硬化の生涯管理が求められる.
Keyword:
▶虚血性心疾患は主要な死因である.
,
▶疾患概念はACADへと転換された.
,
▶慢性冠動脈疾患は労作時胸痛が特徴的である.
,
▶慢性冠動脈疾患は内科的治療と生活指導が基本となる.
,
▶LDL-Cは70mg/dL未満を目指す.
,
▶高リスク例にはPCSK9阻害薬の併用を考慮しLDL-C 55mg/dL未満を目指す.
,
▶慢性冠動脈疾患の症状残存時はPCIやCABGを検討する.
,
▶ISCHEMIA試験で血行再建の限界が示された.
,
▶急性冠症候群では前駆症状の把握が重要である.
,
▶STEMIでは迅速な再灌流が求められる.
,
▶急性冠症候群ではリスクに応じ侵襲戦略を選択する.
,
▶IVUSやOCTなど血管内イメージングが手技の最適化に有用である.
,
▶二次予防では包括的管理が必要である.
,
▶無症候段階からの介入が今後の課題である.
,
▶ACS発症時最大耐用量のスタチン療法を受けてもLDL-C≧55mg/dLの場合,エゼチミブ,PCSK9阻害薬を追加し,LDL-C<55mg/dLを目指す.
,
▶ACADという新しい概念のもと,無症状段階の粥状硬化病変の段階から疾患をとらえ,生活指導や薬物療法を行う.
,
▶動脈硬化の生涯管理が求められる.
pp.1486-1495
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.10_006
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
虚血性心疾患は冠動脈の狭窄により心筋虚血が引き起こされる疾患である.虚血性心疾患は依然として主要な死亡原因であり,日常診療で内科医・プライマリケア医が頻繁に遭遇する疾患群である.特に冠動脈の粥状硬化によって生じる狭心症や心筋梗塞は,大きく慢性冠動脈疾患(いわゆる安定狭心症や無症候性心筋虚血)と急性冠症候群(不安定狭心症や急性心筋梗塞)に分類され,それぞれ診断・治療戦略が異なる.近年,これら冠動脈疾患の診療指針が国内外で改訂されており,新知見の反映や概念の見直しが進んでいる.2025年にはLancet誌のCommission報告1)において,従来の「虚血中心」の概念から「動脈硬化性冠動脈疾患atherosclerotic coronary artery disease(ACAD)」へと疾患概念を転換し,無症状の粥状硬化段階からの早期介入・予防の重要性が提唱された.また米国では2025年米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)急性冠症候群患者管理ガイドライン2)が発表され,初期評価から再灌流療法,薬物療法,二次予防に至るまで最新エビデンスに基づく推奨が示されている.本総説では,これら最新の知見とガイドラインに基づき,心外膜を起源とする虚血性心疾患の代表である慢性冠動脈疾患chronic coronary syndrome(CCS)と急性冠症候群acute coronary syndrome(ACS)それぞれの診断と治療の要点を整理し,日常診療に役立つ実践的な視点を提供する.

Copyright © 2025 Bunkodo Co.,Ltd. All Rights Reserved.