特集 近年注目されている感染症
2.新規遺伝子型ノロウイルスGⅡ.P17-GⅡ.17の出現による流行遺伝子型の変化
松島 勇紀
1
1川崎市健康安全研究所 ウイルス・衛生動物検査担当
pp.12-18
発行日 2019年3月30日
Published Date 2019/3/30
DOI https://doi.org/10.34449/J0108.03.01_0012-0018
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食中毒を含む感染性胃腸炎はすべての年齢で発症するリスクがあり,世界各国で発生がみられる.感染性胃腸炎の感染者数は世界で毎年約20億人,感染性胃腸炎による死亡数は世界で毎年約70万人であると推定されている1).また,感染性胃腸炎はウイルス性と細菌性に大別され,世界的に引き起こされているウイルス性胃腸炎の原因の第1位がノロウイルスであると見積もられている1).ノロウイルスが流行する原因のひとつとして,数多くの遺伝子型が存在し,抗原性に関与する抗体の遺伝子型間における交差反応性が限られることが挙げられる2-6).この点は現在開発中のノロウイルスワクチンにおいて解決しなければならない問題のひとつであると考えられる.したがって,ワクチンに含まれる遺伝子型を適切に選定するためには継続的にノロウイルスサーベイランスを行い,各遺伝子型の流行状況を調べるとともに,蓄積していく遺伝子変異の過程を解析することが重要である.われわれはノロウイルスサーベイランスにおいて,2014年に国内で過去にはほとんど検出例のない遺伝子型であるGⅡ.17を感染性胃腸炎事例から検出した.また,本ウイルスは,RNA-dependent RNA polymerase(RdRp)遺伝子において,既知の遺伝子型に分類されない独特な塩基配列を有していた.2014/15シーズン以降,GⅡ.17の感染事例が増加し,新たな流行遺伝子型として定着した.本稿ではノロウイルスGⅡ.P17-GⅡ.17の発見の経緯と遺伝学的な特徴,流行状況について概説する.
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