よくわかる病理診断報告書
Q23 乳癌におけるPD-L1検査について教えてください/Q24 OSNA法について教えてください
森谷 卓也
1
,
藤田 祥典
2
,
磯田 竜太郎
2
1川崎医科大学病理学教授
2川崎医科大学大学院生
pp.26-29
発行日 2021年2月10日
Published Date 2021/2/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0096.06.02_0026-0029
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PD-1(Programmed cell Death-1)は,活性化T細胞の表面に存在する受容体です。抗原提示細胞にそのリガンドであるPD-L1(Programmed cell Death-1-Ligand 1)が存在すると,PD-L1と結合してT細胞の応答を抑制,または停止させます。このメカニズムは,T細胞による自己の細胞への攻撃を回避するための重要な役割を担っています(免疫チェックポイントシグナル伝達)。しかし,癌組織において腫瘍細胞がPD-L1を有している場合,T細胞のPD-1と結合することによってT細胞からの認識を逃れ,腫瘍免疫に対する抵抗性を獲得してしまいます。そこで,PD-L1またはPD-1のモノクローナル抗体薬が開発され,がん免疫療法としてさまざまな癌腫の治療に用いられるようになりました。乳癌では,抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体であるテセントリクが免疫チェックポイント阻害薬として認可され,ホルモン受容体陰性,HER2陰性の手術不能または再発患者で,PD-L1陽性の場合に適応があります。PD-L1陽性の確認は,投与前に専用の体外診断薬(PD-L1キット;SP142)と指定された機器を用いたコンパニオン診断として実施されます。
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