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ゲノム情報の臨床現場での応用に際し,次世代シーケンサー(next generation sequencer:NGS)の到来が大きな推進力になったことは自明である1)。NGSは,それまでのSanger法が核酸配列を1本ずつ一次元的に読み解いていたのに対し,遺伝子断片の拡散配列を数万本単位で3次元的に読み解くことで,数千万倍のスピードでの読み取りを可能にした装置である。現在,Illumina社とLife Technologies社がNGS装置の世界のシェアを占めているが,Illumina社のものはSequence by Synthesis法という蛍光色素を付加した塩基を連続画像処理によって核酸配列を読み取る手法を使用している。他方,Life Technologies社のものは,ポリメラーゼによる伸長反応に伴いピロリン酸とプロトンが生成され,このときのpHの変化を半導体で検出することにより塩基の取り込みを読み取るIon Torrent™テクノロジーを利用している2)。各社ともNGSには複数の種類があり,これは解析できるデータ量およびサンプル数の違いによる。例えばIllumina社のNGSでは,最大容量を誇るNovaSeqは6テラベース(Tb)の出力を誇る一方で,最も小型のものではMiniSeqという7.5ギガベース(Gb)のシーケンサーが用意されている。これらの機種は,後述するような解析の目的や内容に応じて選定されることになる。筆者らは,北海道大学病院にて国内初の院内完結型クリニカルシーケンスシステムとしてCLHURC検査を開発し,現在はその方法論をベースとして国内受託型癌遺伝子パネル検査であるPleSSision検査の臨床実装を行った。この検査では,後述するアンプリコンシーケンス法を採用し,Illumina社のMiSeqを用いて160遺伝子の95%以上のエクソン領域の解析を行っている。これまで,350症例以上の検査を実施し,ドライバー遺伝子は92%同定され,FDA承認薬剤ないし国内治験薬剤の有効性に関わる遺伝子異常(Druggable遺伝子異常)は59%の症例で検出している3)。本稿においては,これまでのPleSSision検査の実施経験から,NGSを用いた癌ゲノム解析,ならびに,乳癌におけるゲノム異常について述べる。
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