臨床医のための乳腺基礎医学
脂質異常と乳癌
笹野 公伸
1
1東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座病理診断学分野教授/東北大学附属病院病理部部長
pp.25-28
発行日 2018年8月20日
Published Date 2018/8/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0096.04.02_0025-0028
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乳癌の罹患/危険因子として今まで種々の要因が提唱されてきた。特に最近では大きな関心が患者のgenomic DNA変異に向けられているが,これら遺伝子異常は最大でも乳癌全体の5-10%程度でしか認められず,全体の危険因子としては,若年発症の症例などを除くとむしろ例外的である1)。そこで多くの乳癌発症,進展の危険因子として遺伝的因子よりは病理学的には外因に分類される環境因子に再び大きな注目が集まっている。さらにこれら環境因子は乳癌における個々のサブタイプにより異なるとも考えられるようになってきた。現在,サブタイプを問わず最もインパクトが高い環境因子としては“肥満”があげられる2)3)。さらに肥満により生じる種々の外因のなかでも,脂質異常症あるいは高コレステロール血症と乳癌局所でのコレステロール代謝の変化が乳癌の発症ばかりでなく,外科手術後の再発/転移などに密接に関係する因子として大きな注目を集めるようになってきた4)-6)。そこで本稿ではこれら脂質異常のなかでもコレステロール代謝異常に注目し,現時点で高コレステロール血症と乳癌発症/進展に関し,何が何処まで明らかにされているのか?に関して解説する。特に比較的知られていない乳癌局所でのコレステロール代謝異常と乳癌の発症,進展,再発,転移などとの関係に関して最新の基礎的知見をここに紹介する。
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