臨床医のための乳腺基礎医学
糖尿病と乳癌
笹野 公伸
1
1東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座病理診断学分野教授/東北大学附属病院病理部部長
pp.24-28
発行日 2015年8月10日
Published Date 2015/8/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0096.01.02_0024-0028
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「緒言」近年,本邦でも糖尿病,特に生活習慣病としてのⅡ型糖尿病の頻度が増加してきている。患者の罹患率が高くなると当然予想されることではあるが,臨床的にも糖尿病を有する患者が乳癌を発症する症例,あるいは乳癌を治療している患者で糖尿病を発症する症例が飛躍的に多くなってきている。いわゆる前糖尿病段階を含めると多くの乳癌患者で,程度の差はあれ耐糖能異常が認められることは不思議ではない。基礎的な観点からこのように糖尿病と乳癌,あるいは乳腺疾患との関わりを考えていくと以下の3つの点がポイントになる。1.1つは全身の糖代謝の異常が乳腺の機能あるいは組織に与える影響であり,糖尿病にある程度特異的な乳腺疾患とその機序に関してが挙げられる。2.もう1つの糖尿病と乳腺疾患との関わりは,Ⅱ型糖尿病は多かれ少なかれインスリン抵抗性を伴っており,血中のインスリンあるいはinsulin-like growth factor(IGF)-2が過剰状態になっていることに関係する。
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