New Information of Glaucoma
幹細胞因子によるエピゲノム情報の若返りと視力回復は可能か?
阿部 周策
1
,
佐々木 裕之
2
1九州大学生体防御医学研究所 学術研究員
2九州大学生体防御医学研究所 教授
pp.47-51
発行日 2021年9月10日
Published Date 2021/9/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0024.01.62_0047-0051
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筆者の1人である佐々木は,2020年に開催された第31回日本緑内障学会(久保田敏昭会長)において,「ヒトエピゲノム研究の現状と医学応用」と題して特別講演を行う機会を得た.その際,多くの眼科疾患においてエピジェネティクスの異常が報告されていること,緑内障においてはTGF-β遺伝子のDNA低メチル化が線維化と相関しているらしいこと,エピジェネティクスを含む遺伝子制御ネットワークの研究が眼科疾患の解明と治療に貢献する可能性があること1)などについて述べた.眼科領域におけるエピゲノム研究は緒に就いたばかりという印象だったが,大いに将来性を感じる内容であった.そのようななか,ハーバード大学を中心とする国際共同研究チームから驚くべき研究成果が報告された.人工多能性幹細胞の誘導に用いる山中因子2)をマウスの網膜神経節細胞に導入すると,そのDNAメチル化パターンが若返って軸索再生能が高まり,緑内障や老化による視力低下を回復させるという3).すばらしい成果だが,その信憑性と実用性はいかほどであろうか? タイミングよく本稿の執筆を依頼されたので,当該研究について第三者の立場で解説を試みる.
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