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緑内障を興味の中心に置いた開業医生活が20年超となった.この間,プロスタグランジン関連薬の上市に始まる緑内障点眼剤が拡充した時期に巡り会い,そのおかげで原発開放隅角緑内障(primary open angle glaucoma:広義POAG)の多くは点眼治療により目標眼圧の達成が可能となり,生涯にわたるQOVもほぼ確保できるだろうと予測されるまでに至った.だが最近,この予測が楽観的に過ぎるのでは…と感じている.治療のアドヒアランスが良好,かつベースラインから20%減の眼圧レベルが達成・維持されているにもかかわらず,緑内障性視野障害(VFD)進行を認める症例を少なからず経験するようになったからである(図1).そもそも,現在の高齢社会の実態が直接的に反映される一般クリニックの外来で「超」慢性進行性疾患である緑内障を長期にわたりフォローすれば,VFDの進行は想定内ともいえるだろう.しかし,高齢社会は同時に「人生100年時代」も想定内とし,したがって数十年先を見据えたQOVの確保は日々の診療のなかで喫緊に対応すべき「臨床問題」となっている.そこでVFD進行の「スローダウン」1)を目指し,受診ごとの眼圧値に「これは変動?あるいは変化?」と一喜一憂しながら,1mmHgでも低く!と眼圧削減に勤しんでいる.その結果,処方点眼薬追加のやむなきに至るが,一方,長期にわたる緑内障治療では負担の最小化を勘案し,治療強化は可及的に回避したい.緑内障点眼治療に付き纏うこの二律背反に対しては,緑内障の多数例について積み重ねてきたデータを評価し,その「後押し」を得て目の前の症例に落とし込むことが「現状ベスト」の方策と考えられる.そこで今回,点眼治療を受けた正常眼圧緑内障(NTG)の自験例を中心に,その眼圧削減とVFDの経過の関連を「Archives」として振り返った.
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