連載
ホルモンQ&A
三宅 達也
1
,
木村 正
2
1大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室助教
2大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室教授
pp.69-71
発行日 2023年6月1日
Published Date 2023/6/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0015.30.02_0069-0071
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
LGBTとは,L:Lesbian(レズビアン),G:Gay(ゲイ),B:Bisexual(バイセクシュアル),T:Transgender(トランスジェンダー)の頭文字から作られた言葉であり,性的嗜好に関わる類型と性自認に関わる類型からなる性的少数者の総称として用いられ,人口の約3〜8%程度を占める1)。身体的な性は女性,性自認は男性であるFTM(female to male)当事者に対しては,身体的治療として性別適合ホルモン療法(gender affirming hormone therapy;GAHT)が行われる。アンドロゲン製剤の投与開始後3ヵ月程度で月経停止を認め,治療開始後1〜2年程度で体毛・髭の増加や声の低音化が起こる。一方で,卵巣の組織学的構造や原始卵胞数はテストステロン長期曝露後でも保たれており,FTM当事者に対する長期間のアンドロゲン製剤の使用によっても,その影響自体により卵子が消失することはない2)。つまり数ヵ月〜数年間のGAHT後に休薬した場合,体毛量増加や体型など身体的特徴は不可逆的な変化のままで,月経は再開し自然排卵も可能な状態となる。テストステロン投与開始後のFTM当事者に対する生殖補助医療(assisted reproductive technology;ART)成績に関する報告3)では,調節卵巣刺激による採卵周期において,非投与群に比し回収卵子数や成熟卵子数は有意な低下を認めなかった。
Medical Review Co., Ltd. All rights reserved.