連載
脳におけるエストロゲンの見えざる作用 第36回 ―性別不合の脳の形成のしくみ―
武谷 雄二
1
1東京大学名誉教授/医療法人社団レニア会アルテミスウイメンズホスピタル理事長
pp.74-79
発行日 2023年3月1日
Published Date 2023/3/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0015.30.01_0074-0079
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これまでは性染色体がXXかXYにより各々卵巣,精巣が発生し,それで性別のすべてが説明されていた。しかし性別不合が相当数存在することで,ジェンダーアイデンティティ(GI)という概念が提唱され,脳の性が注目されるようになった。つまり,性には内外性器(性腺・性管)の分化と脳の性とが存在し,これが一致するのが異性愛者,乖離するのが性別不合となる。両者の不一致が存在する背景として,両者が決定される時期にずれがあることが挙げられる。すなわち,ヒトでは胎齢2ヵ月までに内外性器の分化がほぼ終了するが,脳の性の分化は妊娠後半期に起こる1)。しかも後者は前者とは独立して進行する。性別不合の脳はどのようにして形成されるかを考えるために,本稿では脳の性の形成機序について解説する。
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