連載
脳におけるエストロゲンの見えざる作用 第31回
武谷 雄二
1
1東京大学名誉教授/医療法人社団レニア会アルテミスウイメンズホスピタル理事長
pp.71-76
発行日 2021年12月1日
Published Date 2021/12/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0015.28.04_0071-0076
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
一般に,男女の識別は身体的構造の違いで語られることが多いが,最も重要な性差は脳である。なぜならば脳の性は性格,行動,得意とする能力,職業,生き方など,われわれの営みの多くに影響を及ぼしているからである。また,脳の性はパートナーの選別,生殖行動にも関わっており,ヒトという種の存続のためには脳の性差が不可欠となる。いわば男女の違いは脳の性差に帰するといっても過言ではない。身体的性差は脳の性が欲する願望を実現するための装置という位置づけができる。しかしながら,脳の性差はあまりに自明であり,しかも形而下で認識されにくいため科学的俎上に乗せられることはあまりなかった。本稿では主に実験動物を用いた研究で得られた知見をもとにして,脳の性差がどのように決定されるかを眺めてみたい。
Medical Review Co., Ltd. All rights reserved.