特集 DOHaD
DOHaDをめぐる疫学:先駆的研究から最近のゲノムワイド研究への展開
佐田 文宏
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1東京医科歯科大学難治疾患研究所非常勤講師・法務技官/科学技術振興機構研究開発戦略センター俯瞰委員(疫学・コホート担当)
pp.17-24
発行日 2015年12月1日
Published Date 2015/12/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0015.22.04_0017-0024
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「Summary」Developmental origins of health and disease(DOHaD)は,疫学研究から得られた知見に基づいて提唱され,“ヒトの健康や疾患等の健康状態は,胎児期~幼小児期の発達段階を起源としている”という医学的学説である。特に,この胎児期~幼小児期に起こるエピジェネティック変化の誘導によって,成人期以降に発症する非感染性疾患(non-communicable diseases;NCDs)に対する感受性が形成されると考えられている。世界中に蔓延するNCDの根本的な予防対策として,この時期に適切な保健介入をすることによって最大限の効果が期待されている。最近のゲノムワイド関連研究(genome-wide association study;GWAS)により,出生時体重と成人期以降の2型糖尿病と高血圧,出生時頭囲と晩年の神経変性疾患のように,発達期の発育指標と成人期以降に発症する慢性疾患との間に遺伝的な関連があることが示唆され,DOHaD説を遺伝学的な面からも支持するエビデンスが蓄積されてきた。今後,ライフコースのエピジェネティック変化の過程のエビデンスの蓄積とともに,胎児期~小児期における先制医療の重点化大規模プロジェクトの計画立案や中枢研究教育拠点の設置により,DOHaD研究が一層発展することを期待したい。「Key words」DOHaD,低出生体重,先制医療,ゲノムワイド関連研究(GWAS),エピゲノムワイド関連研究(EWAS)
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