連載 Medical Scope
多発性硬化症の成因研究最前線 ~多発性硬化症のタイラーウイルスモデルは神経炎症と心筋炎を誘導する~
尾村 誠一
1
,
角田 郁生
2
1近畿大学医学部微生物学講座 講師
2近畿大学医学部微生物学講座 教授
pp.67-71
発行日 2021年8月20日
Published Date 2021/8/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.39.08_0067-0071
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タイラーウイルス(Theiler's murine encephalomyelitis virus:TMEV)をマウス脳内に接種すると,感受性SJL/Jマウスでは脊髄に持続感染し,慢性炎症性脱髄病変が誘導されるため,多発性硬化症のウイルスモデルとして頻用されている。一方,抵抗性C57BL/6マウスにTMEVを脳内接種しても,持続感染や脱髄病変は生じない。近年,われわれはTMEVをC3Hマウス腹腔に接種することにより,ヒト心筋炎でみられる3つの異なる病期を再現する新規のウイルス性心筋炎モデルを確立した。C3Hマウスでは心筋でのTMEV感染,炎症,線維化の順で病期が進行するのに対し,SJL/Jマウスでは心筋へのTMEV感染のみ起こり,その後の病期に進行しない。本稿では,単一の病原体により誘導される2つの免疫性疾患モデルについて知見をまとめた。
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