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糖尿病網膜症は高血糖が持続することで網膜血管が機能的に障害されて,二次的に周囲組織も障害される血管病変である1)-7)。特に糖尿病で特徴的な細小血管障害による虚血を特徴としている。厚生労働省による調査では,わが国の糖尿病患者総数は950万人と報告されている。わが国での疫学研究によると,糖尿病患者の網膜症の有病率は久山町研究では16.9%とされている8)。2017年の厚生労働省研究班による視覚障害者の原因疾患を調査した疫学研究では,視覚障害者1級相当の失明者の原因疾患は緑内障が28.6%,網膜色素変性症14.0%,糖尿病網膜症12.8%,黄斑変性8.0%という結果で,糖尿病網膜症は第3位に位置していた。2007年の同調査では糖尿病網膜症が21.0%の第2位であった。SGLT2(sodium-glucose cotransporter 2)阻害薬などの新しい糖尿病薬の登場によって,近年は明らかに糖尿病のコントロールは改善していると考えられ9),日常診療でも重症の糖尿病網膜症をみる機会が減っている印象がある。しかし,依然として糖尿病網膜症で失明に至る症例が後を絶たないことも事実である。糖尿病網膜症の初期病変は高血糖によるポリオール経路の亢進,最終糖化産物(advanced glycation end products:AGEs)の蓄積,プロテインキナーゼC(protein kinase C:PKC)の活性化,酸化ストレスの亢進や局所の炎症などさまざまな代謝異常が生じる10)。この時期から血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)をはじめとする種々のサイトカインにより病態が修飾されていく。その基本病態である網膜血管の透過性亢進,網巻血管の内腔閉塞,新生血管を伴う線維血管増殖組織の形成のすべてにVEGFが関与していることが知られている11)。近年,抗VEGF製剤が開発され糖尿病網膜症への治療のメインストリームになっている。「KEY WORDS」糖尿病網膜症,抗VEGF製剤,光干渉断層計(OCT),OCTアンギオグラフィー,高齢者
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