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発達障害者支援法における発達障害(児・者)について述べる。発達障害支援法の第2条に,わが国における“発達障害”の具体的な名称として,自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠如・多動性障害などが示され,その他にも,脳の機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの(ICD-10のF80-89,F90-98に含まれるトゥレット症候群などのチック,吃音症など)までが“発達障害”の範囲となっている。“発達障害児・者”は,日常生活または社会生活に制限を受けるものであり,発達障害の特性があるだけでなく,周囲の適切な配慮や支援を必要としている1)。発達障害の診断概念については,船曳先生の項で詳しく述べられている。それによると発達障害とは,自閉症スペクトラム障害 (autism spectrum disorder:ASD),注意欠如・多動性障害 (attention-deficit hyperactivity disorder:ADHD),学習障害 (learning disability:LD),発達性協調運動障害 (developmental coordination disorder:DCD) などの神経発達症を中心に,生涯にわたり支援が必要な,変化しにくい特性の概念である。知的能力障害,てんかん,脳性麻痺などは,従来の用語が優先され,背景因子や概念の線引きが不明瞭な状態が“発達障害”として総称されている。本稿はこの概念に基づき,薬物治療について記述していく。薬物治療は発達障害に対する医療的支援の一部である。成人の精神疾患と同様に,児童・青年期の精神疾患において薬物治療は重要な治療アプローチの1つである。しかし児童・青年期精神疾患の精神科医療は薬物治療,心理的なアプローチ,環境調整など多様な治療的な試みがなされ大人の精神科医療とは趣が異なっている。そして児童・青年期精神疾患の薬物治療の分野は,各々の経験によって行っている状態でエビデンスが少ない。さらに薬物治療効果についても子どもは成長とともに代謝能などが変化し大人とは異なり,副作用も起こりやすく薬物は慎重に投与する必要がある。わが国では児童・青年期患者を対象とした厳密な治験を得て許可された向精神薬は少なく,多くが適応外使用になっている。小児の自閉性障害,知的障害に伴う異常行動,病的・精神症状に対するピモジド,ADHDに対する徐放性メチルフェニデートおよびアモキサピン,2016年,小児期のASDに伴う易刺激性に対してアリピプラゾールおよびリスペリドンの適応,2017年,小児期におけるADHDに対してグアンファシン,小児期の強迫性障害にフルボキサミンの適応。このような状況で,厚生労働科学研究委託事業 障害者対策総合研究開発事業において,児童・青年期精神疾患(発達障害を含む)の薬物治療ガイドラインを作成し普及することを目的とした研究班が立ち上がり,ガイドラインを作成した2)3)。本稿の目的のASD,ADHD,LD,DCDなどの神経発達症は,各々合併し,さらに他の精神疾患も併存することが特徴である。この4つの神経発達症のなかのLD,DCDに関する薬物治療は報告されていないので,ASDとADHDを中心として薬物治療に関して述べる。「KEY WORDS」薬物治療,自閉症スペクトラム障害,注意欠如・多動性障害,併存症
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