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黒質線条体系の神経変性を伴うパーキンソン症候群には,パーキンソン病(Parkinson's disease;PD),多系統萎縮症(multisystem atrophy;MSA),進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy;PSP),大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration;CBD),レビー小体型認知症(dementia with Lewy body;DLB)などがあり,いずれもパーキンソニズムが主体の運動障害疾患である。また,PDで認知機能障害を呈すると認知症を伴うパーキンソン病(Parkinson's disease with dementia;PDD)とされるが,厳密にDLBとの区別は難しく,共通する病理背景からPD,PDD,DLBなどをまとめてレビー小体病(Lewy body disease;LBD)という疾患概念が提唱されている。パーキンソン症状は,2015年にMovement Disorder Societyで提唱されたPDの診断基準(MDS-PD Criteria)において,運動緩慢に加え,静止時振戦あるいは筋強剛との組み合わせで定義される1)が,この診断基準で前述のパーキンソン症候群を鑑別することは困難であることが多い。LBDの部分的な症状だけのときには基礎疾患の鑑別が難しく,病状の進行とともに判明することも少なくない。LBDとその他のパーキンソン症候群,認知症との鑑別には早期の段階での脳CT・MRIによる形態学的診断だけでは十分でなく,核医学分野の機能画像が有用となる。図1は,ドパミン作動性神経の節前神経・節後神経およびシナプス間隙の模式図である。ドパミン節前神経の神経終末にはシナプス小胞があり,小胞輸送体である小胞モノアミントランスポーター(vesicular monoamine transporter 2;VMAT2)を介して神経伝達物質のドパミンを蓄えている。神経伝達物質は開口分泌によりシナプス小胞からシナプス間隙に放出され,節後神経の膜状に存在するドパミン受容体に作用する。節前神経にも自己受容体(autoreceptor)が存在し,それを介してシナプス間隙のドパミン量を調節している。ドパミンは,チロシンがチロシン水酸化酵素(tyrosine hydroxylase;TH)によりレボドパへ変換され,レボドパが芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(aromatic L-amino acid decarboxylase;AADC)で代謝されることで生合成される。ポジトロンCT(PET),single photon emission tomography(SPECT)のそれぞれで用いる放射性トレーサーを用いて,ドパミンの代謝経路に関する酵素やトランスポーターを標識化し,ドパミン節前神経の神経終末が可視化される。現在,わが国で行えるPDの機能画像検査として,ドパミントランスポーター(dopamine transporter;DAT)シンチグラフィ(DAT SPECT),¹²³I-metaiodobenzylguanidine(MIBG)心筋シンチグラフィ,脳血流画像検査などが挙げられる。本稿では,2014年から保険診療で可能となったDAT SPECTであるN-ω-fluoropropyl-2β-carbomethoxy-3β(4-¹²³I-iodophenyl)nortropane(¹²³I-FPCIT)SPECT検査,DATスキャンについて解説する。「KEY WORDS」パーキンソン病,レビー小体型認知症,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,多系統萎縮症,ドパミントランスポーター
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