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高齢者医療におけるポリファーマシー対策
二宮 洋子
1
1川崎医科大学附属病院薬剤部 部長
pp.56-59
発行日 2018年7月20日
Published Date 2018/7/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.36.07_0056-0059
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近年特に高齢者におけるポリファーマシーの問題が取りざたされています。ポリファーマシーとは薬を多種類併用することで、薬による有害事象が起こっている状態をいいます。2015年の中央社会保険医療協議会資料によると、複数の医療機関から10種類以上の投薬を受けている患者は前期高齢者で11.7%、後期高齢者では27.3%と報告されています。また、後期高齢者の患者の15%以上で有害事象がみられるといわれており、その主な要因の1つは薬の多剤併用であると考えられています。高齢者では多くの薬剤を使うと副作用が起こりやすいだけでなく、加齢変化に基づく代謝機能の低下による影響が重なってより重症化しやすくなります。代表的な老年症候群の症状として、食欲低下、意識障害、認知機能障害、睡眠障害、抑うつ、せん妄、めまい、ふらつき、転倒、尿失禁、嚥下障害がありますが、これらが薬による副作用である可能性もあります。なかでも高齢者に起こりやすい薬物有害作用はふらつき・転倒、認知機能障害であり、特にふらつき、転倒による骨折が原因で寝たきりになり、寝たきりが認知症を発症する原因となる可能性も示唆されています。ポリファーマシーを回避するには、まず服用している薬を医師か薬剤師にすべてみてもらい、症状がないのに漫然と続けている薬はないか、薬の重複や飲み合わせはないかチェックしてもらうことが第一歩です。また管理栄養士には、何でも薬に頼るのではなく、食事の内容の改善や工夫によってできることをアドバイスしたり、薬の作用に影響する食物の避け方などを指導することが求められます。
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