文学にみる病いと老い
(93)「江戸の流行り病 麻疹騒動はなぜ起こったのか」
長井 苑子
,
泉 孝英
pp.116-123
発行日 2016年6月20日
Published Date 2016/6/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.34.06_0116-0123
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疱瘡*1は見目定め,麻疹*2は命定め――江戸時代,麻疹は大人も発病し命に関わると恐れられていた。将軍*3から町人*4まで人々はいかに麻疹と付き合ってきたのか。医学書や御触書*5,浮世絵*6などから論じ,麻疹を通して江戸の社会を描く。(本書カバー裏表紙より引用)病気の予防,診断,治療をめぐっては,正鵠(せいこく)*7を射たものから,利得を求めての怪しげなものまで登場するのは,いつの時代も同じことである。啓蒙書も,啓蒙というより扇動書としか言いようのないものまで現れる。医師とて例外ではない。科学的にきちんと実証されていない異説に腐心*8することもみられる。マスコミも,病気の正しい知識や対応の仕方とはかけはなれた情報を流すことも多い。医師とマスコミが結託すると,効定まらぬ高価な薬は“夢”の新薬と化す。
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