世界の波
眼鏡と入齒の騒動
末松 滿
1
1朝日新聞
pp.38-39
発行日 1951年11月10日
Published Date 1951/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200177
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「眼鏡をかけたい」「齒を人れたい」--全世界の注目をひいた10月25日のイギリス總選擧も,元を洗えば眼鏡と入れ齒の騒動です。ご承知のとおりイギリスでは,勢働黨窯が天下をとり戰後6年間にわたつて社會主義の政策を進めてきもした。1週間に鶏卵1個,肉はマッチ箱2つの大きさバターも牛乳も砂糖も細々とした配給で,國民全體がいわゆる耐乏生活勞のですが,一方では「揺り藍から墓場まで」という社會保障制度が完成し,孤兒でも不具者でも失業者でも老人でも,およそイギリス國民と生れた以上,死ぬまで生活ができるようにしました。病氣になれば醫者も藥も無料ですし,眼鏡も入齒も同じく無料で國家から與えられます。ところが,どこの國にもチヤツカリ組はあるもので,今までは熱があつてもふとんにもぐつていた連中が,ちよつと風邪をひいても病院へ注射をたのみに行くようになつたため,政府では年に4億ポンド(約3,300億圓)以上も費用を出しました。そのころイギリスは,アメリカとともに大西洋同盟を結び,軍事協力を誓つたので,戰闘機や軍鑑や大砲を作る費用も,47億ポンドほど出さねばなりません。これを3年計劃でやることとし15億ポンドが昨年から豫算に計上されましたが,その金は税金として國民から取立てます。直接税,間接税合わせて1億4千萬ポンドが,まず増税の手初めでしたがおかげでラジオ,自動車,電熱器,その他多くの日用品は3割5分の値上りです。
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