文学にみる病いと老い
(90)「一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い」
長井 苑子
,
泉 孝英
pp.86-91
発行日 2015年12月20日
Published Date 2015/12/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.33.12_0086-0091
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
まあいいでしょう,とあきらめることを知る。人生の楽しみは無尽蔵。いいことずくめの人はいない,一生もない。どんなに愛する人でも,いつ奪われるかわからない。(本書,帯封より引用)超高齢者といえば,90歳以上だろうという受け止めが普通になってきたようである。90歳代も半ばくらいまでなら,まだまだ自助自立している人が多いことには驚かされる。長生きは,自助自立できるなら,してもいいけれど,介護の日々でお迎えを待つだけの日々,単調で遠慮がちの日々,こういう状況は,経済的なことも含めて,これがいつまで続くのかと,一人ひとりの高齢者にストレスを与えていることである。認知症*1があっても,経済的なことには,とりわけ敏感に反応するおじいさんを間近に見かけることも少なくはない。介護の仕事で禄*2を食んでいる人たちは数百万の単位で増えているが,そのお手当は,仕事のしんどさに比べると決して満足すべきものではない。直接生産に結びつく仕事ではない。医療,介護への公共財源の配分という観点に立つと,なかなか難しい面がある。
Medical Review Co., Ltd. All rights reserved.