特集 これで慌てない! 消化管出血マネージメント
ねらい
土屋 輝一郎
1
1筑波大学医学医療系消化器内科
pp.289-289
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.34433/dt.0000001163
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消化管出血はいまだ救急車出動が多い疾患であり,厚生労働省医政局地域医療計画課調べ(平成29年度実績)では救命救急センターでの年間重篤患者のなかでも心血管疾患,外傷,敗血症などに次いで多い疾患である.以前は出血性胃潰瘍・十二指腸潰瘍が非常に多く緊急内視鏡を要したが,Helicobacter pyloriの発見,除菌治療や未感染率の増加によりその頻度は減少している.その一方で,大腸憩室出血など下部消化管出血症例が増加しており,消化管出血への対応はいまだ需要が高い状況である.そのため,消化管出血リスクを事前に把握し,消化管出血を未然に防ぐことも重要である.肝硬変など門脈圧亢進患者の食道静脈瘤破裂については,定期的な内視鏡検査と静脈瘤治療にて突発的な出血を抑えることができる.つまり,かかりつけ医での診療から消化管出血リスクを評価することが非常に重要であり,適切な時点で総合病院や専門病院に精査依頼をすることが望まれる.また,消化管出血の際の状態把握,初期治療方法の選択,出血部位の把握など消化管出血患者を診療する際の知識も必要である.特に,抗凝固薬や抗菌薬の服用,大腸憩室出血の既往,放射線治療歴の有無など初療時の問診が消化管出血の部位特定や治療方針決定に大きく寄与することも留意されたい大事なポイントである.

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