連載 注目の新薬
ゾコーバ®(エンシトレルビル フマル酸錠)
小宮 幸作
1
,
門田 淳一
2
1大分大学医学部呼吸器・感染症内科学講座
2長崎みなとメディカルセンター
pp.1110-1115
発行日 2023年8月1日
Published Date 2023/8/1
DOI https://doi.org/10.34433/dt.0000000367
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COVID-19の治療における抗ウイルス薬の位置づけ
初めて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第1例目の感染者が中国で報告された2019年12月から3年以上が経過した.この間,COVID-19の病態が明らかになると同時に,様々な治療法が開発または発見されてきた.ウイルスの増殖速度は流行株によって異なるものの,初期には共通してウイルスの増殖が中心となり,その後宿主によっては過剰な免疫反応,すなわちサイトカインストームが生じ得ることが判明した(図1).そのため,抗ウイルス薬は可能な限り早期に投与する必要がある.比較的パンデミック初期から使用された抗ウイルス薬のレムデシビルは,当初は酸素を必要とする患者にのみ適応とされた.しかし,酸素投与を必要とする時点では,すでにサイトカインストームが生じているため,最も重要なアウトカムである死亡抑制効果はみられず,改善までの日数を短縮する効果のみ確認された1).その後,酸素投与を必要としない重症化因子を有する軽症例を対象にレムデシビルを投与することで,入院または死亡を強力に抑制することが判明した2).この2つの臨床試験は,重症化因子を有するCOVID-19患者に対し,抗ウイルス薬を早期に投与することが重要であることを証明した.
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