チャイルドヘルス 28巻9号 (2025年9月発行)

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特集　小児期逆境体験（ACEs）が子どもにもたらすもの

企画の言葉八木　淳子 28巻9号 , 2025年9月 , pp.645-645

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　小児期逆境体験（ACEs）が人の心身の健康に及ぼす影響について，世界中の研究で次々に明らかにされてきていますが，さまざまな逆境的な体験が子どもの育ちにどのように影響し，どの時期にどのようなかたちで表れるかということについて，世の中一般に広く理解されているとは言い難いのが現状です。小児期の逆境体験は，今や，個人の人生において負の影響が何十年も続くというだけでなく，世代間伝達や地域の集合的トラウマなどさまざまなかたちで長期的に作用し，人間の発達の方向性や生命予後，社会のあり方にまで大きな影響を及ぼす可能性のあるヘルスケア上の重要な問題だといえます。

1　小児期逆境体験とは何か八木　淳子 28巻9号 , 2025年9月 , pp.646-649

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小児期逆境体験（ACEs）は人の生涯にわたり心身の健康や寿命にまで影響することが知られてきています。ACEsとは何か，ストレス反応とその長期的影響，支援の基盤となるトラウマインフォームドケアについて概説します。

2　小児期逆境体験とアタッチメント山下　洋 28巻9号 , 2025年9月 , pp.651-655

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小児期逆境体験（ACEs）は生涯の健康に多層的影響を及ぼしますが，その影響が世代間で伝達される重要なメカニズムのひとつとして，アタッチメント形成過程の機能不全があります。本稿ではアタッチメント理論に基づき，ACEsが精神病理や神経発達に与える影響を検討し，親子への予防・介入の重要性と具体的方策を示します。

3　機能不全家庭で育つということ加藤　郁子 28巻9号 , 2025年9月 , pp.657-660

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「機能不全家庭」とは，「ごちゃごちゃした家」などと説明されることが多く，困りごとを多く抱えた家庭です。こういった家庭で育つ子どもたちは，ACEsをもつ子どもと同様の影響を受けることが知られています。

4　子どもの虐待～親子へのさまざまな影響～上野　千穂 28巻9号 , 2025年9月 , pp.661-664

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児童虐待とは，子育ての困りをだれに，どのように発信してよいのかわからない養育者のSOSでもあります。不適切な養育となってしまう背景をまず整理し，親子ともに元気になってもらえる支援について考えます。

5　小児期逆境体験としてのいじめの影響桝屋　二郎 28巻9号 , 2025年9月 , pp.665-668

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いじめは近年，ACEsの重要項目であり，時として虐待被害を上回る心理的悪影響を中長期に渡って遺します。多くの子どもたちがいじめ被害・加害の立場を変遷しながら経験しており，ネットいじめなどいじめの様態も変化しています。支援者の高い意識が求められるでしょう。

6　学校にまつわる逆境体験～学校の問題をどう捉え解決するべきか～和久田　学 28巻9号 , 2025年9月 , pp.669-672

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学校での傷つき体験（学校ACE）は子どもの心身や将来に深い影響を与えます。生存者バイアスに気づき，科学的知見に基づいて学校を「安心・安全な場」へと変える必要があります。

7　自然災害と子どもの育ち～保育の現場から～足立　智昭 28巻9号 , 2025年9月 , pp.673-676

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自然災害は子どもの心身の発達に大きな影響を及ぼします。本稿では，保育者など支援者が子どもの不安に気づき，安心感を育むかかわりの重要性や，家庭・地域との連携のあり方について解説します。

8　逆境的環境が子どもの育ちに与える影響福地　成 28巻9号 , 2025年9月 , pp.677-679

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自然災害や貧困などの逆境体験は，子どもの発達や心身の健康に影響を与えます。「みちのくこどもコホート」研究からは，保護者のストレスや地域とのつながりが子どもの情緒・行動に関与することが示され，家族全体を支える支援の重要性が明らかとなりました。

9　子ども期の逆境体験と問題行動松浦　直己 28巻9号 , 2025年9月 , pp.680-682

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子どもの問題行動があると，「愛着障害」が疑われるようになってきました。これは明らかに誤解であり，「愛着障害」の概念の拡大化は深刻です。養育の問題は子どもの行動に強く影響しますが，それらは子どものセルフコントロールを低下させる効果があります。

10　逆境体験とトラウマインフォームドケア三宅　和佳子 28巻9号 , 2025年9月 , pp.683-686

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トラウマインフォームドケアは，子どもにかかわるすべての人がそれぞれの子どもにどのような逆境体験があるかに気づき，その影響等についても十分に理解したうえで，適切な対応するための概念です。

11　世代間の連鎖と家族への支援福丸　由佳 28巻9号 , 2025年9月 , pp.687-690

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子どもの育ちに大きな影響を与える家族は，小児期逆境体験の研究において，機能不全という視点から多くの知見がみられます。家族のライフサイクルや多世代の関係を視野に入れ，親自身の逆境体験と養育の課題，また離婚という家族関係の移行期を中心に支援の可能性や課題を考えます。

12　子どもの歯科におけるネグレクト早期発見・防止の視点熊谷　優志 28巻9号 , 2025年9月 , pp.691-693

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地元の保育所・幼稚園・小学校・中学校の学校（園）歯科医を25年務めてきました。子どもたちを継続的にみるなかで，子どもの虫歯はけっして口の中だけに問題があるのではなく，養育環境の問題が口の中に現れていることに気づきました。これまでの経験から，歯科ならではの視点で述べます。

13　小児期逆境体験とレジリエンス岩垂　喜貴 28巻9号 , 2025年9月 , pp.694-696

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レジリエンスとは逆境から回復する力で，保護要因（認知発達，肯定的視点，家族関係，自己管理，トラウマ理解）やポジティブ体験（PACEs）が育みます。ICAREやARCモデルは介入枠組みを提供し，子どもの全体像をとらえる視点が重要とされます。

Myオピニオン

子どもたちに “遊び” と “友だち” を返していくこと紅谷　浩之 28巻9号 , 2025年9月 , pp.641-641

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　私は在宅医療を行う医師として医療的ケア児と出会いました。医療的ケア児は，生まれつきの病気や障害，または事故や病気の後遺症により，日常的に医療が必要な子どもたちです。彼らの生活をみて気づいたのは，私たちの医療の支援だけでは彼らを十分に支えられないということでした。確かに，医療を家に届けることで安心感は生まれますが，子どもが家に閉じこもり，病院以外に行く場所がない状態は，子どもらしさを奪ってしまうと感じました。そこで，「この子たちがもっと自由に過ごせる居場所を作るべきではないか」と考え，2012年に「オレンジキッズケアラボ（以下，ケアラボ）」を設立しました。

連載　子どもに薬を飲んでもらえる！　とっておきの服薬指導・第5回

抗ウイルス薬～発症したら服用してください～松本　康弘 28巻9号 , 2025年9月 , pp.698-702

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子どもに薬を飲んでもらうにはどうすればいい？そんなお悩みをもっている方も多いと思います。そんなお悩みにお答えすべく，本連載では，松本先生にとっておきの指導方法を教えていただきます。明日からお役立てていただけること間違いなしです！

連載　子どもの心と体をはぐくむ　住まい空間・あそび空間・第6回

砂場のある風景仙田　満 28巻9号 , 2025年9月 , pp.703-705

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砂場との出会い

　子どもにとってのあそびは，そのあそび場のもっている要素，樹木だったり，水だったり，そして遊具などの道具等によって大きく影響されます。その関係性を長年研究してきました。遊具というものがどのようなものである必要があるのか，子どものあそび意欲を喚起する遊具や広場の構成はどのようなものでなければならないのかというのが，私の長い間の研究テーマでした。それがあそびやすい空間の構造という7つの条件―循環，シンボル，近道，めまい，変化，広場，ポーラス―という多様な体験要素をもつ遊環構造という空間仮説になっているのですが，それにまったくあてはまらない遊具というのが，砂場という存在です。子どもにとって砂場は楽しみの場です。かつてヨーロッパの子どものあそび環境の研究旅行をしたとき，ドイツのフライブルグの幼稚園で，素晴らしい砂場に出会いました。各保育室の前に砂場があり，そこはしっかりと日陰となるようにパーゴラがかけられていました。私が訪れたのは午後で，すでに子どもたちが帰った後でしたが，そこはまさに生き生きと砂場で造形あそびをしていた直後の様子でした。そのつくりこんだ子どもたちの熱中さが伝わってくるような素晴らしいものでした。私は，その子どもたちの造形力の高さに感動してしまいました。きっと夢中で子どもたちの世界を作り上げていたに違いありません。また日本では，お茶の水女子大学附属幼稚園を訪れたとき，その保育室の前にそれぞれ大きな砂場があるのを発見しました。100年以上前に，すぐれた幼稚園の保育室の前には豊かな砂場が設けられていたのだとつくづく感心しました。

連載　こどもまんなか！　スクールソーシャルワーカー・第9回

いじめ～子どもの人権をどう守るか～沖田　昌紀 28巻9号 , 2025年9月 , pp.706-708

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子どもたちの学校生活を支えるソーシャルスクールワーカーの方は，実際にどのようなお仕事をされているのでしょうか？　本連載では，最前線で活躍されている先生方に，お仕事の実際から学校での子どもの様子などをお伝えいただきます！

連載　てんや・わんや・こどものほんや・第9回

詩と絵本中藤　智幹 28巻9号 , 2025年9月 , pp.709-711

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ここは，街角に佇む子どもの本屋さん。晴れの日も曇りの日も雨の日も，外を行きかう子どもたちの姿が見える店内では，さまざまな本が手に取られるのを待っています。時には，ここが子どもの居場所となることも。流れる日々のなかで店主の中藤さんが考えている，絵本のこと，子どものことを少しだけお話しいただきます。

育児Q&A

自宅でのご飯の食べ方にこだわりがある石﨑　優子 28巻9号 , 2025年9月 , pp.713-713

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Q　いま5歳の男の子です。家でごはんを食べるとき，親の膝の上にのせて，口元にごはんを運ばないと食べません。大好きなパスタやピザ，お好み焼きなどは，自分でパクパクと食べますが，それ以外のごはんは，あれはヤダ，こんなの食べたくない，ママのご飯は嫌い，多すぎる，などなど，さまざまな罵詈雑言を吐いて食べようとしません。諦めて，膝の上にのせてごはんを食べさせると，ほぼ完食します。保育所では，自分でごはんをきちんと食べているようで，先生からは家では甘えてるんですね，と言われますが，夜ごはんだけでなく，忙しい朝にもこの調子なので，こちらが参ってしまいます。なにかよい対応方法はありますか？

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目次 28巻9号 , 2025年9月 , pp.642-643

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本号掲載広告一覧 28巻9号 , 2025年9月 , pp.644-644

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information（投稿論文受付） 28巻9号 , 2025年9月 , pp.668-668

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投稿について 28巻9号 , 2025年9月 , pp.715-715

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アンケートシート 28巻9号 , 2025年9月 , pp.716-716

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バックナンバー 28巻9号 , 2025年9月 , pp.717-719

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次号予告／編集後記 28巻9号 , 2025年9月 , pp.720-720

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基本情報

チャイルドヘルス
28巻9号
(2025年9月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：1344-3151 診断と治療社

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第10位鼻にスプレーするタイプのインフルエンザワクチン，今までのものとどう違う？伊藤健太チャイルドヘルス 28巻 10号 pp. 790-791 (2025年10月1日) 診断と治療社

投稿規定

チャイルドヘルス 28巻9号 (2025年9月発行)

特集 小児期逆境体験（ACEs）が子どもにもたらすもの

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連載 こどもまんなか！ スクールソーシャルワーカー・第9回

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