海外文献の紹介
自閉症の子どものいる家族に生まれてくる子ども(次子)の20.2%が自閉症を発症する
榊原 洋一
1
1お茶の水女子大学名誉教授
pp.817-817
発行日 2024年10月1日
Published Date 2024/10/1
DOI https://doi.org/10.34433/ch.0000000664
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自閉スペクトラム症(ASD)は,愛着関係をうまく結べない(母)親が原因であるといわれていたことがある。1943年に,レオ・カナー(Leo Kanner)がASDを初めて報告したときには,カナー自身,ASDは生得的(先天的)なものであると考えていたが,ベッテルハイム(Bettelheim)という心理研究者が,「冷蔵庫母説」を唱え,子どもに冷たく接し,愛着関係が成立しないことが原因であるという説を主張し,一時期それが主流になっていたのである。イギリスの児童精神科の大家であるラター(Rutter)は,双子の片方がASDである場合にもう一方がASDを発症する率が,一卵性双生児では9割以上であるのに対し,二卵性双生児では数%と有意に低いことを証明し,ベッテルハイムの愛着関係不全説を否定した。ラターの論文は,研究対象者数が少ないなどの批判もあったが,ASDに遺伝子が関与していることが揺がぬエビデンスとして認められている。
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