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母子の低栄養が全年齢の人類の死亡や障害に与える影響の全体像
榊原 洋一
1
1お茶の水女子大学名誉教授
pp.737-737
発行日 2024年9月1日
Published Date 2024/9/1
DOI https://doi.org/10.34433/ch.0000000635
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筆者が医師になった頃は,人のさまざまな集団(国,性別,貧困度,年齢)の健康や病気の指標といえば死亡率ないしは治癒率がおもに使われていた。たとえば乳児死亡率は子どもの健康状態の基本的な指標であり,がんの5年生存率といえば治療の効果の指標だった。このことは現在でも変わらないが,いつしか病気が治っても,治癒後の生活の質(quality of life)が不十分であれば,その治療(法)はまだ最良のものとはいえないようになってきた。現在でも乳児死亡率,平均寿命などは世界の国々の健康の指標として使われているが,それだけではその集団(国など)を構成する人たちの健康の指標としては不十分であるという認識が広まってきたのである。そうした複合的な指標としては,障害調整生命年数(disability adjusted life years:DALY,病的状態,障害,早期死亡などによって失われた年数),損失生存可能年数(years of life lost:YLL,人が早死にしなかった場合に生きていたであろう平均年数),障害とともに生きた年数(years lived with disability:YLD)などがある。
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