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はじめに
Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)は院内で分離される耐性菌として医療関連感染を起こす,最も分離頻度が高い多剤耐性菌である。2016年の厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)全入院患者部門の公開情報では,対象とする薬剤耐性菌による新規感染症発症患者数の割合は,MRSAが93.91%で,次いでPenicillin-resistant Strep-tococcus pneumoniaeの3.48%,Carbapenem-resistant Enterobacteriaceaeの1.78%,Mul-tidrug-resistant Pseudomonas aeruginosaの0.70%,Vancomycin-resistant Enterococciの0.07%,Multidrug-resistant Acinetobacterの0.05%の順であった。またMRSAが分離さ れた主な感染症の中で肺炎が37.4%と最も多く,次いで菌血症18.6%,皮膚・軟部組織感染14.3%,手術創感染10.0%の順で報告している1)。
検査部門の公開情報では,MRSAは医療機関1,653施設のうち1,652施設の99.9%から分離報告され,院内で分離される耐性菌として最も分離頻度が高い。MRSAに対する感受性は,バンコマイシン(VCM;塩酸バンコマイシンⓇ)の感性率は99.98%で,耐性株の 報告はなかったが0.02%(41株)で中等度耐性,テイコプラニン(TEIC;タゴシッドⓇ)は165,213株のうち7株が中等度耐性,9株が耐性,リネゾリド(LZD;ザイボックスⓇ)の感性率は99.95%で,0.05%(66株)が耐性,ダプトマイシン(DAP;キュビシンⓇ)の感性率は99.2%で,0.8%(182株)が非感性である2)。
本邦で上梓されている抗MRSA薬は,2018年7月時点でVCM,TEIC,アルベカシン(ABK;ハベカシンⓇ),DAP,LZDの5つの薬剤であるが,同年8月には新規オキサゾリジノン系薬のテジゾリド(TZD;シベクロトⓇ)が上市された(表1)。このような背景を踏まえ,本稿では耐性動向を踏まえた抗MRSA薬の適正使用について述べる。
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