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内容のポイント Q&A
Q1 肥満症患者の心理的特徴は?
肥満症には遺伝的素因が大きいが,各個人の心理社会的な要因も大きく影響している.日常的にはオベシティスティグマにさらされ,精神疾患に苦しむ者も散見される.認知行動面の特徴は単一ではないが,自身の感情の把握・調整が苦手で,感情が刺激される親密な社会的交流を避ける傾向があるといわれている.
Q2 肥満症患者の食行動に影響する因子は?
高カロリーな食事は脳の報酬系を強く刺激し,ドーパミンが分泌され快楽を増幅させる効果があり,肥満症の原因となりやすい.また肥満症になりやすい食事傾向として,①早食い,②間食の頻度,③好き嫌いによる偏食,④食事のタイミング,⑤食環境の影響,⑥ストレス負荷等が挙げられる.正しい食育・栄養指導とともに,各患者がさらされる食行動に伴う心理社会的状況の把握と理解が重要である.
Q3 肥満症治療に必要な心理的サポートは?
食事制限によってストレスコーピングの手段を失うことで,充実感が得られず口寂しさ等から不安焦燥を自覚し,反応性に精神状態が不安定となる可能性がある.認知行動療法をはじめとする,動機付け面接,グループ療法,家族療法を含めた疾病教育等が有効とされる.しかし最も大事なのは患者の幼少期からの生い立ちや家庭環境,性格・気質や社会的な背景といった各患者の抱えている苦しみを理解する治療的態度である.可能であれば上記について聴取し,肥満歴とライフイベントを整理し,患者の状況について多職種が共有・連携してサポートすることで,各個人に合わせた専門的で包括的な医療を提供することができる.
Q4 社会が肥満症患者に抱くオベシティスティグマ(差別・偏見)とは?
肥満症患者に対する否定的な社会的認識や差別的な態度をオベシティスティグマという.肥満症は自己管理の欠如や個人の努力不足であると見なされることから,職場での低評価や教育の現場でのいじめにつながり,さらには社会的なさまざまな好機が制限され,肥満を助長するといわれている.また,医療者の中にも無意識のうちにスティグマは存在し,適切な受療の機会を妨げている.

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