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食料生産段階でも,不具合,出荷調整,規格外作物,加工残渣など,さまざまな理由により食品ロスが生じる.国際連合食糧農業機関(FAO)によると,収穫後から流通までの間に,生産された食料のおよそ14%相当(経済価値換算)の食品ロスが世界全体で生じているといわれている(The State of Food and Agriculture 2019より).食品ロスの原因としては,地域での差も大きいが,概して農場における収穫後の取り扱い,貯蔵,加工,包装などがあげられる.
具体的には,FAOでは収穫時間の不足,気象条件,不適切な収穫方法なども食品の損失につながると指摘している.国内でも作況指数でみられるように作物の収穫量は毎年増減するが,より精度の高い気象予測と連動した作物の育成・収穫も食品ロス削減の取り組みの一つととらえられる.稲の場合,籾の熟成・収穫にかかる時間,雨や台風の到来などが質・収量に大きく影響する.筆者が取材した稲作の名人は,それらを見据え流動的に育成や収穫の判断を行っていた.また,生産と消費の差異も存在し,野菜の収穫量に対し出荷量は14%少ない(農林水産省.平成30年野菜生産出荷統計より).
食品関連事業者に視点を向けると,可食部の食品廃棄における業界別の内訳は,食品製造業では「製造工程における原材料端材」33.3%,「発酵残渣,抽出残渣等のうち食用にできるもの」9.0%などが目立ち,食品卸売業においては「返品,不良品」30.1%,食品小売業では「販売期限切れの商品」48.9%などが目立つ(農林水産省委託業務.令和5年度 食品産業リサイクル状況等調査委託事業 報告書より).
このように,食品ロスは多岐にわたり,食品の納入期限および販売期限1/3ルール(製造者,販売者,消費者の三者が製造日から賞味期限までの期間を1/3ずつ分け合うとする商習慣)の見直しなど多くの試みが行われているが,食料生産者だけで解決するのは困難である.したがって,情報と流通を整理し,領域を越えた取り組みは不可欠となる(図1).
さて,給食現場において取り組めることは限定されるが,逆に給食現場だからこそ有効である取り組みも少なくない.過剰生産となる農作物などを積極的に用いた事例では,スケールメリットが発揮される.また,腐敗しやすく飼料・堆肥化にも課題があるおからを用いて,給食では古くから多くのメニューが開発されている.今回は,“Reduce”の視点からの学校給食レシピを紹介する.
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